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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  ソポクレス
出版社: 岩波書店(藤沢令夫)

  オイディプスがテーバイの王となった途端に、テーバイは不作や厄病に襲われます。彼は、先王ラーイオスを殺した犯人を罰すれば災いは去る、という神託を受け、犯人を捜そうとします。ですが、自分こそが真犯人であることが発覚。さらに実母イオカステと交わって子を儲けていたことを自覚し、悲嘆に暮れ・・・

  ギリシア悲劇の代表格らしいです。

  簡潔で明快でスリリング。登場人物はそれほど多くはないし、短いので読みやすいです。以前にオイディプスがスフィンクスを退治しているそうなのですが、それらのことは基本的に劇の内では扱われません。だから、何人かの人間の掛け合いだけでほとんどの場面が終わってしまいます。それでいて、やっぱり衝撃的。

  全てが神託の通りにすすみます。オイディプスは、父を殺し、母を犯すことになります。運命に翻弄され、それに逆らうことは出来ません。その事態を避けようとしても、その逃避行為がさらに事態を悪化させてしまうのです。

  オイディプスは徹底的に無力で、なんというか憐れですらあります(最初から神託など受け取らなければいいのに、と思ってしまうけど)。しかし、人間はすべからくそういうものかも知れない、とも感じます。

  なんというか本当に救いがないです。

  『オイディプス王』は後世の学者・文学に多大な影響を与えたそうです。たとえばフロイトは、オイディプスこそ、人間の無意識のうちに潜む根本的な願望の具現化なのではないか、というようなことを推測したそうです(フロイトがエディプス・コンプレックスという言葉を生んだ)。なんとも嘘くさい気がします。フロイトは性的願望で多くのことを説明していくし・・・ そのようなことを気にせずとも楽しめます。

  藤沢令夫訳。


自森人読書 オイディプス王
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515老人と海
★★ アーネスト・ヘミングウェイ

514時間衝突
★★★★ バリントン・J・ベイリー

513永遠を背負う男
★★★ ジャネット・ウィンターソン

512血と暴力の国
★★★★ コーマック・マッカーシー

511伝奇集
★★★★★ ホルヘ・ルイス・ボルヘス
明日、卒業式。
もう一応卒業です。

明日以降、ブログをどうしようかと考えているのですが。

まあ、三月の間に考えればいいか、と感じます。どうだろう・・・
★★

著者:  アーネスト・ヘミングウェイ
出版社: 新潮社

  老いた漁師サンチャゴは84日間に渡って1匹の魚を釣ることもできませんでした。それでも彼は待ち続け、老人を慕う少年の期待に応えようとします。そして、85日目になってとうとう大物を捉えます。ですが、その大物というのがまた途轍もない大きな敵だったため、老人は力を振り絞り、必死に闘うことになるのですが・・・

  アメリカの小説家・ヘミングウェイ晩年の作品。

  とにかく、単調です。事実をただただ丹念に列挙し、積み上げていくだけ。感情を排した、その男性的で濃密な文体が堪らなく良い、というふうに評価する人もいるみたいですが、読み進めていくだけで疲れてきます。徹底して感情的にならない文体にこだわること自体が、一種偏執的・感情的とも言える気がします。

  老人は、海を月に支配された女と似たようなものと看做し、それと闘います。しかし最終的に勝つことはできず、ボロボロになって帰還します。そして愛しの少年と再会します。

  基本的に、女性は物語の背景に存在するのみであり、全く未知なものとして描かれています。そして、老人が唯一、対等な「特定の存在」として認識しているのは、少年のみ。男にしか理解できない、男同士の結びつけというものがある、というメッセージしか読み取れないのですが。

  ようするに、『老人と海』というのはボーイズラヴみたいなものなのかなぁ。とか、そういうふうに勝手に推測すると『老人と海』も少しは楽しめるかも。

  ピューリッツァー賞フィクション部門受賞作。


自森人読書 老人と海
★★★★

著者:  バリントン・J・ベイリー
出版社: 東京創元社(大森望)

  物語の舞台は近未来の地球。人類亜種を駆逐して異種戦争に勝利した白人たち(真人)の国家タイタンが、世界を支配していました。考古学者ヘシュケは、三百年前に撮られた一枚の写真を見て驚きます。そこには現在の姿よりもはるかに古びた遺跡が写っていたからです。ようするにその遺跡は日に日に新しくなっているわけです。いったいどういうことなのか。その後、彼は偶然に発見した時間旅行機に乗って未来へいくことになるのですが・・・

  時間を扱ったSF小説。

  これこそがワイドスクリーン・バロックなんだそうです。生真面目なハードSFとはまたちょっと違っていいです。タイトル通り、時間の衝突が描かれています。

  途中で、突如として時間を自在に操作する中国人たちの宇宙都市〈レトルト・シティ〉に、はなしが移ります。その都市では生産区域と娯楽区域が分断され、行き来できないようになっています。なんというか、奇妙な仕組みです。登場する中国人たちも面白いです。いつでも冷静で、茫洋としていて決して感情に流されないのです。

  人種差別の問題も巧みに取り込まれていますが、基本的にリアリズムとは無縁と言ってもよく、とにかく奇想天外な驚きが追求されています。よくこのようなことを考え付くものだ、と感心しました。時間と宇宙をここまで自由自在に扱うとは・・・

  日本版序文はブルース・スターリング。訳者は大森望。愛に満ちた訳者あとがきがまた良いです。

  星雲賞受賞作。


自森人読書 時間衝突
「トトロのトポス」は、自由の森学園図書館からの情報発信。

自由の森学園に関する最新の情報がのっています。たぶん、自由の森学園のことを、最も早く知ることができるのではないか、と感じます。

明後日は卒業式。

自由の森学園の卒業式は、長いです。いろいろなことが起こります。

卒業式のことも、トトロのトポスを見たら、いちはやくわかるかも。

トトロのトポス
★★★

著者:  ジャネット・ウィンターソン
出版社: 角川書店

  アトラスはティタン族に属する神の一員でした。ですが、ゼウスと戦って敗れ、いつまでも世界を背負うこととなります。彼は、黄金の林檎を持ち帰るために現れたヘラクレスに頼まれ、林檎をとりにいきます。そしてその間、ヘラクレスに世界を任せます。彼は林檎をもぎつつ様々なことを思うのですが、やはりもとの場所へと戻り・・・ 神話と自伝的な物語が入り混じった小説。

  『永遠を背負う男』は、「新・世界の神話シリーズ(THE MYTHS)」の中の1冊。

  ギリシア神話を焼きなおしたもの。かと思いきや、実はそうとばかりもいえず、作者自身の物語も同時に綴られます。そして、じょじょに世界は膨らんでいきます。宇宙犬ライカまで登場。非常にかわいらしいです。

  そうしてライカとも出会い、自分の重みに疑問を覚えたアトラスは・・・ 最後の場面で、アトラスの決断とジャネット・ウィンターソンの決断が重なります。

  背負った重荷をいかにしておろすか。考えてみると本当に難しい問題だなぁ、と感じました。自分がおろしてしまえば、世界がどうなるか分からないとなればなおさらです。しかし、いつかおろすことが必要になるかも知れない。そのときどうするか。

  妙に凝り固まったように感じられる訳が残念。ビシリビシリとして痺れるのですが、読みづらいです。だけど、むしろつっかかるくらいでちょうど良いのかも知れません。シリアスな内容とはマッチしています。それほど長いわけではないのに読み応えはあるし、なんというか心に残ります。とても、重い小説です。


自森人読書 永遠を背負う男
★★★★

著者:  コーマック・マッカーシー
出版社: 扶桑社

  ヴェトナム帰還兵のモスは、メキシコ国境近くで、蜂の巣状態にされた車と殺された人間を見つけます。どうやら麻薬密売人どうしの銃撃戦があったらしいのです。そこには大金が残されていました。モスは金を持って逃げ出しますが、息のあった男に水をあげようとして殺人者シュガーに目をつけられてしまいます。シュガーが現れた場所には血が撒き散らされ、何十人もの人が死にます。老保安官ベルはそれを止めようとするのですが・・・

  強烈なノワール/暗黒小説。

  コーマック・マッカーシーは1933年生まれのアメリカの小説家だそうですが(『血と暴力の国』は2005年発表)、細部を徹底的に描写するところなどは非常に先鋭的。括弧(「」)がなく、地の文と台詞が混じっているので少し読みづらいのですが、味があります。

  読んでいると暗い気持ちになります。ここまで不気味で、救いのない物語も珍しいのではないか。ヴェトナム戦争が背景にあるらしいとは感じられるのですが、誰もそれによってもたらされたひずみ/惨禍から逃れられません。

  血に塗れた国家アメリカの現実を描き出した作品なのではないか、と僕は感じました。

  神を信じず、自分の論理にだけ従って幾らでも人を殺していく不気味な殺し屋シュガーが物凄く印象的です。それと対照的なのは老保安官ベル。彼は古きよき時代を想い、つらつらと悩み続けます。しかしどれだけ考え、悩み、苦しみ、動いたとしても彼にはどうしようもありません。

  なぜならば、多分、シュガーという存在自体がアメリカ社会に根ざしたものだからです。シュガーは銃を振り回し、血を撒き散らし、人を殺し続け、決して倒れません。あまりにも非人間的。まるで戦争に適応した怪物としか思えません。ですが、それこそがアメリカなのではないか?

  人間性とは何なのか、良い社会とは何か考えさせられます。


自森人読書 血と暴力の国
★★★★★

著者:  ホルヘ・ルイス・ボルヘス
出版社: 岩波書店

  『伝奇集』は、『八岐の園』と『工匠集』が合わさった短編集。

  『八岐の園』には『トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス』『アル・ムターシムを求めて』『『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール』『円鐶の廃墟』『バビロンのくじ』『ハーバート・クエインの作品の検討』『バベルの図書館』『八岐の園』が収録。『工匠集』には『記憶の人フネス』『刀の形』『裏切り者と英雄のテーマ』『死とコンパス』『隠れた奇跡』『ユダについての三つの解釈』『結末』『フェニックス宗』『南部』が収録。

  ホルヘ・ルイス・ボルヘスはアルゼンチンの小説家。ですが、ラテンアメリカの小説家たちに多大な影響を与えたため、世界的に著名だそうです。

  説明しがたい短編がずらりと並んでいます。

  それぞれの短編の中に広大な迷宮/世界が存在しています。難解だけど、物語自体は短いのでけこっうあっさりと読みきることが出来ます。

  ボルヘスは、観念的なことを乾いた文章で淡々と綴っていくので、普通の小説とは少し読み応えが違います。描写から想像していくことができない、というか、掴みどころがない、というか、本当に文章を読んでいると感じるのです。

  説明しづらいのだけど。物語を要約した結果、浮かび上がってくる構造・全体像について論じられているのだけど、それが一般的な感覚では把握できず、その構造自体も言語に寄りかかったものだから浮遊的で実体がない、というような感じ。実態のないものに関する構造を綴っている、というか。この言葉自体の不可解さを明らかにする、奇妙な味は本当に楽しいし、素晴らしいです。

  たとえば、『バベルの図書館』は、どこまでも構造的に広がっていて果てのない図書館についての物語。そこにはあらゆる本が収められており、しかし同じ本は2つとないようなのですが・・・

  小説っぽくないのに、小説でしか出来ないことをなしとげた小説、なのかなぁ。『伝奇集』を論ずることは一生かかっても不可能なのではないか、と感じます。本当に面白い短編集。


自森人読書 伝奇集
あしたあさってと、自由の森学園では学習発表会が行われます。
そういえば、少し前、『週刊金曜日』に、斎藤環の「団塊の世代」診断がのっていました。面白かったです。

斎藤環は、「団塊の世代」が現在の政治不信を生み出していると批判します。
『乳と卵』
『乳と卵』を再読しました。やっぱり面白い、と感じました。

なんというか、深刻なことを容赦せず、しかし、深刻一辺倒になることもなく、徹底的に書いていく部分が良いです。


読んだ本
川上未映子『乳と卵』(再読)
510鬼の跫音
★★ 道尾秀介

509妊娠小説
★★★★★ 斎藤美奈子

508さようなら、ギャングたち
★★★★★ 高橋源一郎

507犬はどこだ
★★★ 米澤穂信

506ハイブリッド・チャイルド
★★★★★ 大原まり子
★★

著者:  道尾秀介
出版社: 角川グループパブリッシング

  『鬼の跫音』は、道尾秀介の短編集。『鈴虫』『(ケモノ)』『よいぎつね』『箱詰めの文字』『冬の鬼』『悪意の顔』収録。

  『鈴虫』
  警察官が私のものに現れたため、私は11年前に起こったS殺人事件のことを思い出します。あのときのことを知っているのは鈴虫だけのはずなのに・・・

  『(ケモノ)』
  出来の良い家族の仲で、僕だけが穀潰しなので蔑まれていました。僕はある日、椅子の脚を折ってしまい、中からSのメッセージを発見します。

  『よいぎつね』
  私は二十余年ぶりに街へ戻ってきます。しかしかつて肝試しとして女を陵辱したことを思い出し、恐怖に震え・・・

  『箱詰めの文字』
  小説家である私のもとに青年が現れます。彼は、「あなたの部屋から盗んだ招き猫の貯金箱を返しに来ました」と告げるのですが、しかし私には心当たりがなくて・・・

  『冬の鬼』
  鬼の跫音が聞こえてくる・・・ 日記を振り返っていくと恐るべき事実が明らかになります。

  『悪意の顔』
  陰湿ないじめを繰り返すSに私は辟易させられるのですが。

  ホラーのようなミステリのような作品ばかりが収められています。非常にどす黒く、基本的に薄暗いです。少し江戸川乱歩を連想するし、あとは黒い水脈系統の作家たちの影響も感じます。虫や鳥獣がわざとらしく登場するところが印象的。

  そういえば、Sという人物がどの短編にも登場しますが、同じ人物ではありません。もしかしたら、悪意と狂気を体現した存在なのかなぁ、と感じます。

  あまりこういう黒い小説は好きではないし、全体的に玉石混交という感じだし、道尾秀介の巧みさが全面的に発揮されているとは思えませんでした。とはいえ、仰天させられるものもありました。『冬の鬼』のオチは怖かったです。


自森人読書 鬼の跫音
★★★★★

著者:  斎藤美奈子
出版社: 筑摩書房

  誰も言及しないけれど実は「妊娠小説」というジャンルがはっきりと存在している、と著者は主張します。望んでいないのに子どもを授かってしまうことを妊娠と呼びますが(嬉しい場合は懐妊・おめでた)、妊娠を扱った小説は非常に多く、その先祖を探すべく時代を遡っていけば明治にまでいきつくのだそうです。妊娠小説の父は森鴎外の『舞姫』、そして、妊娠小説の母は島崎藤村の『新生』。その系譜は途切れることなく現在にまでいきつくのです・・・

  『妊娠小説』は文芸評論家・斎藤美奈子が始めて出版した本。

  こういう切り口があったのか、と感心させられました。文芸評論なのに、非常に分かりやすく、それでいて面白いです。

  妊娠小説は、ほとんどの場合、なぜか必ず「生む」ことを望む女が、「生まない」ことを望む男の意思に押さえつけられる物語として捉えることができるのだそうです。結局、男性の優位が保たれているところを見ると保守的ともいえるわけです。

  そしてきっちりとした型が見られるのだそうです。男が妊娠を告げられたときの反応も、女が妊娠に気付くときの反応もワンパターン。登場人物たちはぐだぐだ言い訳して、絶対に避妊しないし、その言い訳は妊娠した後に書かれている・・・ そんな共通性がみられるのか、と面白すぎて笑ってしまいました。

  「妊娠」はけっこう大事だから多くの作家たちが、都合よく利用するのだという主張には納得します。

  石原慎太郎の『太陽の季節』も、倉橋由美子の『パルタイ』も、村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』も、村上龍の『テニスボーイの憂鬱』も妊娠小説。かすり気味だけど、大江健三郎の『死者の奢り』なんかもやっぱり妊娠小説。そして、三島由紀夫の小説はたいてい妊娠小説と聞いて驚きました。

  日本文学に興味がある人には絶対におすすめ。何に対しても迎合せず、距離をとる斎藤美奈子のバランス感覚とフェミニズム的視点がとても良いです。


自森人読書 妊娠小説
★★★★★

著者:  高橋源一郎
出版社: 講談社

  詩人の「わたし」は女性と出会い、愛し合います。そして、彼女には「中島みゆきソングブック(S・B(ソング・ブック))」という名前をあげ、彼女からは「さようなら、ギャングたち」という名前を貰います。そんな、わたしと「S・B」と猫である「ヘンリー4世」の日々を描いた作品。詩とは何か、言葉とは何かといった問いや、分からないものとの出会いなどが、ポップな文体で綴られていきます。

  高橋源一郎のデビュー作。第4回群像新人長篇小説賞優秀賞受賞作。

  ポストモダン文学の最右翼とも言うべき作品。ページには空白が多くてスカスカしているのだけど、それでいて深い物を含蓄しているように見えます。文章が進むごとに、物語が更新されつつも変容していくので訳が分からなくなりますが、とにかく面白いです。

  役所から送られてきた通知を読み、娘が死ぬことを知った上で、彼女との1日を過ごす場面が一番心に残りました。なんというか本当に不条理で、哀切に満ちています。

  著者自身の半生をまとめたものとして読むことも可能らしいです。ある意味では私小説なのか。

  小説の可能性を感じさせてくれます。小説は、ぐにゃっとしたよくわからないものを取り込むことができるし、様々な読み方を促す不可解さをもちあわせていても良いのだということを教えてくれます。言葉っていうのは本当になんなんだろうか。

  ただし、高橋源一郎の小説はとても捉えづらい・・・ 様々な人(有名な評論家とか)が『さようなら、ギャングたち』を激賞し、価値があるものとして捉えているようですが、本当のところ訳が分からないのです。その多義性こそがポストモダン的である、ということなのかも知れないのですが。

  読みやすいし、面白いし、言いたいことは分かる気もするけど、その良さを説明しづらいのです。根本的に分析的な言葉で区切りにくいように出来ている、というか。どのような感想を書いてもそれなりに正しいように思えるし、やっぱり間違っているようにも思えるのです。ただし、そういう多様な読みを求めているが故に、『さようなら、ギャングたち』は素晴らしい小説なのかも知れない。読後、満腹感を味わえます。逆に言うともうこれ以上読みたくない、ということなのだけど(本当に疲れるので・・・)。


自森人読書 さようなら、ギャングたち
花粉症なのか、はなみずがとまらないです・・・
困った・・・
『悪の教典』貴志祐介(文藝春秋)
『錨を上げよ』百田尚樹(講談社)
『神様のカルテ2』夏川草介(小学館)
『キケン』有川浩(新潮社)
『叫びと祈り』梓崎優(東京創元社)
『シューマンの指』奥泉光(講談社)
『ストーリー・セラー』有川浩(新潮社)
『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)
『ふがいない僕は空を見た』窪美澄(新潮社)
『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦(角川書店)


本屋大賞ノミネートが発表されたので、本屋大賞を予想してみます・・・ 全然当たらないかもしれないけど。

消去法で考えていくのならば。まず、このミス1位になり、山田風太郎賞ももらっていて、十分に売れている『悪の教典』はまず、ない、はずです。

有川浩作品は2作はいっていて、票が分かれてしまうから大賞にはならないのではないか。

森見登美彦作品は、毎度2位、3位と微妙な地点。今回もやっぱり微妙な位置か・・・

新進作家が評価されるので、デビュー作『叫びと祈り』『ふがいない僕は空を見た』が本屋対象になる可能性が高いのではないか、と感じます。それから、『謎解きはディナーのあとで』も異様な人気らしいので、あるかも。
なぜ『謎解きはディナーのあとで』が人気なのか。不思議です。赤川次郎みたいな小説として読まれているのか・・・
★★★

著者:  米澤穂信
出版社: 東京創元社

  主人公は、紺屋長一郎という男。彼は東京の銀行に勤めていたのですが体の調子がおかしくなり、職を捨てて故郷に帰ります。そして、地元で「犬探し」をやろうと思い立ち、事務所をひらくのですが、「失踪した人を探してくれ」、「神社の古文書の内容を解読し、歴史を調べてくれ」といった犬探しとは全く関係ない依頼が舞い込みます。そこへ高校時代の同級生・半田平吉が転がり込んできたので、彼とともにその2つの依頼を調べていくことにしました。すると何故か、その2つの事柄、微妙に関連があるようなないような・・・

  渋く苦い探偵小説。

  途中までは読み進めていくのが面倒だったのですが、半分過ぎればあとはすらすら読めます。米澤穂信の小説は、いつでも妙に引っかかって読み辛い・・・

  醒めきって何か悟ってしまったような主人公・紺屋長一郎のキャラクターが面白かったです。様々な物を突き放す彼の態度は、ダークな世界観とマッチしています。そして、主人公とは対照的なうるさいやつ、ハンペーも面白いです。

  ただし、ハンペー(半田平吉)が図書館に行ったきり登場しなくなってしまうのが釈然としなかった、というか少し寂しかったです。もう1人の主人公のはずなのに。もしかして続編が出るのかも知れない。楽しみです。

  最後にどんでん返しが待っています。不意を突かれます。


自森人読書 犬はどこだ
★★★★★

著者:  大原まり子
出版社: 早川書房

  『ハイブリッドチャイルド』は、大原まり子の中短編集。

  『ハイブリッド・チャイルド』
  サンプルBⅢ号は、人類が強大な機械帝国アディアプトロンに対抗するため作り出した戦闘用生体メカニック。肉と機械によって構成されていて原動力は核融合炉であり、不死を誇るため雑種(ハイブリッド)と呼ばれます。彼は人間の命令に絶対に従うはずだったのになぜか意思を持ち、脱走します。そして、人里離れた一軒家で、著名な女性作家とその娘ヨナに出会います。作家はほとんど発狂寸前、娘は虐待され続けて死んでしまったのに意外な形で蘇っていて・・・

  『告別のあいさつ』
  ヨナ(サンプルBⅢ号)は、孤独を好んで険しい山に住処を決めた老人のもとで過ごします。ですが、老人のもとを訪れた人に気付かれ、ヨナは背中から翼をはやし、飛び立ちます。

  『アクアプラネット』
  ママであるドラゴン・コスモスに庇護されつつ宇宙を漂っていたヨナは、白い棺の中に閉じ込められたシバという少年に出会います。2人は惹かれあい、惑星カリタスに降り立つのですが、その星を支配している人工知能ミラグロスがアディプロトンの攻撃を受け、「学習障害」を起こし、発狂。それを復元するために動き回っていたら、2人は離れ離れになってしまい・・・

  子と母を巡る壮大な物語、なのかなぁ。

  ヨナ(サンプルBⅢ号)の他に、もう一人主人公がいます。八百年の記憶を持ったまま老人の姿でこの世に生まれ落ちた神官です。彼は国の頂点にあって人類の全てを把握し、指揮します(サンプルBⅢ号をつくったのも彼)。ですが、年を経るごとに若返っていき、全ての記憶を失っていきます。そして迷いの中に陥っていきます。彼が何者なのか、どうなっていくのか、というのも非常に気になるのですが、じょじょに明かされていきます。

  予想ができず、ザクッと刈り込まれているのにぴったりくる文章。くらくらするほど様々な物がぶち込まれている物語世界。どこまでも広がっていくイメージ。壮大で寓話的/神話的な物語。いかにも大原まり子らしい作品。読んでいると酔いそうになります。

  決して文章が巧みというわけではありません。むしろ悪文として非難されそうな文体なのに、それが凄い効果を発揮しているのです。これこそ、本当の「物語」だと感じました。


自森人読書 ハイブリッド・チャイルド
505戦国自衛隊
★★★★ 半村良

504人類は衰退しました③
★★ 田中ロミオ

503百年の孤独
★★★★★ G・ガルシア=マルケス

502華氏451度
★★★★ レイ・ブラッドベリ

501指輪物語
★★★★★ J・R・R・トールキン
そういえば、本棚の項目が、100に達しました。

まあ、あとから見てみたら、根本的に間違いが書かれていることも多いのですが、誤読が読書なのかも知れません、と書いてみるのですが、やっぱり、これから読み直していかなければ、と思います。
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