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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  恩田陸
出版社: 集英社

  1936年2月26日、東京。日本が無謀なる軍国主義へと向かっていくきっかけとなったとも言われる2・26事件が起ころうとしていたその時。国連がその時間を介入点に選び、歴史の「修正」にのりだします。国連は時間遡行の技術を完成させ、それでもって世界の歴史をよりいい方向へ導こうとしていたのです。けれども事態は予定通りに行かず、じょじょに違う方向へ向かうことに・・・

  ありがちな設定なのだけれど、ありがちを超えているなぁ、と感じました。時間遡行によって起こるパラドックスなんかにはそこまで深くは触れずに通り過ぎていました。それがとても良かったのだろうなぁ、と思います。深入りすればするほど、はなしは混みあって難しくなります。それだけで1つの小説ができてしまうくらいです。

  でも、『ねじの回転』では、2・26事件という、歴史上の大きな事件と、何人もの人の思惑の絡み合いを書いています。もしタイムパラドックスのことに突っ込んでいったらまぁなんとなくだけど、収まりがつかなくなっていたような気がします。

  1936年を生きる安藤輝三大尉、栗原安秀中尉、石原莞爾大佐たちの思い。3人の思いはばらばらです。ただし、国連の言うがままに行動するのではなく、出来うる限り自分の望むように歴史を改変しようと目指します。

  『昭和維新』を掲げて立ち上がった栗原安秀中尉は、『昭和維新』を成功させようと尽力します。彼と同じ立場の安藤輝三大尉も、同じように考えています。2人とは対立している石原莞爾は、『昭和維新』阻止、東条ら軍部にすすめられた愚行、第二次世界大戦を出来る限り、日本にとって良い形になるように動きます。3人ともかなり頭の切れる男たちです。

  その中でも、石原莞爾はぼくが気に入っている人です。恩田陸のこの作品の中では「俺はただの変人だ。法華経にかぶれ、紙の上の戦争を夢想した偏屈な男に過ぎない。」と独白しています。満州事変を起こした張本人であり、2・26事件を糾弾し、東条とは対立し、我が道をすすんだ軍人です。考えていることが面白いなぁ、と思います。

  歴史を修正している国連メンバーの思いもしっかりあります。でもそれよりも昭和の時代の軍人たちの思いのほうが印象に残りました。物語は、途中でだんだん計画は破綻していきます。そして実は真の黒幕がいた、ということが分かったりもするのですが・・・ まぁだいたい予想通りでした。途中で、鈴木貫太郎が退場したときにちょっと考えた流れがあてはまってしまった・・・ なので星は4つで。それでも、ものすごく面白いです。おすすめです。


自森人読書 ねじの回転
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