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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  八鍬真佐子
出版社: 学陽書房

  『猫のぷいさんひげ日記』は、その名の通り猫のぷいさんの日記。

  ぷいさんの口癖は「プイプイ」というもの。ページをめくっていると愉快な気分になってきます。その日その日のご飯と寝床まで、しっかりと書いてあります。

  ぷいさんは人間とは少しずれたところから世界を眺め、記しています。とはいえ、何かを大仰に語りだすというわけではありません(ひげとしっぽの重要性については、熱く書いているけど)。基本的に、いつでもどこでも呑気にしているし、冷静です。だけど、その呑気さが良い味を出しているというか、いつもカッカしている人間とは大きく異なるのです。

  猫の悟り具合というのは尋常じゃないな、と思わされます。人間を超越している、のかも知れない。とか、猫狂的な感想はやめ、もう少し真面目に感想を書くと・・・

  著者の八鍬真佐子はどこまでもしっかりと猫を観察しているんだろうなぁ、と感じました。そうそうそうなんだ、という場面がたくさんあります。そうそう猫って新聞の上にわざわざのるし、何か箱とかあるとすぐに入るんだよなぁ。なんでだか分からないけど。

  猫って良いなぁ、と感じました。妙に優雅というかゆったりしていて、よく寝て、かと思いきや突然飛び跳ね、遊びだすんだよなぁ。読んでいるとそういう光景が目の前に浮かびます。『猫のぷいさんひげ日記』は、余すところなく(かどうかは断言できないかなぁ)、猫というものを活写した面白い本です。


自森人読書 猫のぷいさんひげ日記
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★★★★

文:   片山令子
写真:  姉崎一馬
出版社: フェリシモ

  『森にめぐるいのち』は小さい絵本。掌に乗るサイズ。

  最初は、大木が倒れたところから始まります。そこから、森の全てのものが、ぐるぐるぐるぐるまわり始めます・・・

  森の循環と言うものを分かりやすく教えてくれる絵本。とはいっても、文章はそもそもあまりないし、その上余分な部分はけずりとられているので全く押し付けがましくありません。さらさらと読めてしまいます。むしろ写真にコメントがついているようなイメージです。

  森の写真がとても綺麗です。どの写真も「良い写真だー」と思わされるような良い写真。あんな写真が撮りたいなぁと思います。

  読んでいたら、思わずこれは全体としてきっちりとしたまとまりがある「完成品」だなぁ、と感じました。まぁ絵本はとにかく見てみないと分からないので、ぜひ手に取ってみてほしいです。自由の森学園では林業などもやっているわけですが、その林業のことが少し理解できるかも知れない。言葉としてではなくて、なんとなく感覚的に。

  おすすめ。


自森人読書 森にめぐるいのち
★★★

著者:  三谷幸喜
イラスト:唐仁原教久
出版社: 幻冬舎

  今日、初めてデートした女性とデートの中でけっこう盛り上がって男は良い気分。そして家に帰るわけですが。夜になってなぜか衝動をとめられなくなり、2時頃、今日初めてデートしたばかりの女性に電話をかけてしまい・・・・・ そして俺は、〈恋愛に関する7つの真理〉を学習することになります・・・

  文庫本なんだけど絵本。1分で読めてしまいます。

  しかし内容は深遠、などということはありません。やりたくなるとそれをとめることができない、どうしようもない人間の心境を描いています。バカバカしいです。だけどそこが面白い。

  そこに着地するのか・・・ 妙に納得します。まぁちょっとだけ感心します。

  まぁ読んで損はしないです。買って読むようなものではないし、びっくりするような何かがあるというわけでもないけど。

  それにしても、三谷幸喜は何をやっても面白いものを作ってしまう人のような気がします。といってもあまり知っているというわけではないんだけど・・・ 『笑の大学』『THE 有頂天ホテル』『ザ・マジックアワー』といった最近の映画は見にいきました。あとは、『新撰組!』は歴代の大河ドラマ中珍しく見ていたし。どれも面白い。あと古畑任三郎シリーズをつくったのも三谷幸喜か。舞台もやっているし。

  凄すぎる。


自森人読書 俺はその夜多くのことを学んだ
★★

著者:  小泉武夫
絵:  江口修平
出版社: 東洋経済新報社

  内容はなかなか面白い。あの面白くて凄い漫画『もやしもん』にも通ずるような発酵についての絵本なのですが。

  なんというか、絵本なのに子どもを無視している気がします・・・ 難しい言葉を分かりやすい言葉に置き換えるとか、そういう気配りをしていません。絵本として失格じゃないか。自分の思想を広めるための宣伝本としか思えません。

  著者がやたらと、「日本民族は素晴らしい!」と言いまくるので、ちょっとうんざりしました。日本の食事は「地球上で最も優れた民族食といわれています」などと書いてあります。そんなこと誰が言っているのかなぁ。あえて「・・・といわれています」という言葉を末尾にくっつけて、自分の書いた文章の責任を負わないところもあざとい。(風土にあったものを食べるのが1番良い、と僕は思うけどなぁ・・・)

  あとは断定したがるところもうんざり。「ゆでた大豆と、納豆どちらがうまいか?(もちろん納豆のほうです)」とわざわざ()までつけて意見を押し付けようとするその態度がいやな感じです。偏屈。そこまで自分の意見を押し付けなくても良いじゃないか。

  絵本の表紙にも載っている「発酵仮面」というのがいろいろ喋るんだけど、全体的に滑稽で、気味が悪い。内容は素晴らしいのに、著者の「日本民族最高」という考えと「発酵仮面」が絵本全体をだめにしているのではないか、と僕は感じました。


自森人読書 わが輩は発酵仮面である!
★★★★

著者:  加古里子
出版社: 小峰書店

  『台風のついせき竜巻のついきゅう』は、台風や竜巻、雷といったものを分かりやすく解説したもの。昔読んだときは「世界の仕組み」みたいな何かに触れているように感じて面白いと思ったんだけど、読み直してみても分かりやすくて良い本だなぁと思いました。

  文字がけっこう多いです。でも読んでみるときれいな絵と、いろんなデータやグラフが組み合わせられていて、分かりやすいです。世界のどこで竜巻が起こっているのかということや、竜巻に出会ったときの対処法なんて知らなかったなぁ。アメダスというもののことも、たぶんこの絵本を読んで始めて知ったような気がします。

  台風はそうじき、という比喩は面白いなぁ・・・ 風の「すいこみ口」と、「ふきだし口」があるんだ、ということとかがすぐに分かります。

  「台風をふせげるか、つぶせるか」というページが面白いです。台風の力は、マグニチュード8の地震と同じ。それで原子爆弾10万発分、水素爆弾100発分くらい! だからそれをふせぐなんていうのは無理。それに、台風だっていろんな益(雨→淡水→飲み水)ももたらしているのだし、宇宙の法則の力の通りに動くのだからそれをしっかりと理解すれば被害は減らせる、というところに納得します。

  理科の教科書として使っても全然大丈夫だなぁ、と思います。というか、教科書よりも面白みがあって、この絵本を読むほうがよほど台風や竜巻のことが理解できるかもしれない。

  加古里子(かこさとし)さんって良い絵本をたくさん描いているなぁ・・・


自森人読書 台風のついせき竜巻のついきゅう
★★★

作:  木下順二
絵:  清水崑
出版社: 岩波書店

  小さい頃、けっこうたくさんの絵本を読んでもらったはずなのですが、今ではあまり覚えていません。記憶は曖昧で頼りになりません。絵本の感想書こうとする時に、読み直して始めて、あーそういえばそういうはなしだったけかなぁ、と思い出します。

  だけどこの『かにむかし』だけは、妙によく覚えていました。柿の下にいるカニとサルの絵が、表紙に描いてあるのもくっきり覚えていたし、あの理不尽なストーリーもしっかりと覚えていました。なんというかとても不思議です。どうしてこの絵本だけは覚えているのだろう・・・ 繰り返し読んで貰ったのかなぁ、そんなことはないような気がするんだけど。

  あらすじは『さるかに合戦』と同じです。

  拾った柿のたねをまいたカニ。「はよう芽をだせ、かきのたね」と言いながら育てていたら、いっぱい柿ができました。すると、そこへ意地悪なサルがやってきて、木にするすると登ると美味しいやつをもいでいきます。カニは、自分にもくれというのですが、サルに投げつけられた渋柿に潰され、死んでしまいました・・・

  親をつぶされたカニの子供たちは怒りました。栗や蜂、臼に、はぜ棒と牛のうんちといったものたちを味方につけて、サルのところへ仕返しに行きます・・・

  なぜか、とても鮮明に覚えているなぁ、絵まで。


自森人読書 かにむかし
★★★

著者:  本川達雄、あべ弘士
出版社: 福音館書店

  ちょっと前にはやった、というか噂になった絵本、だと思います、多分。

  もともと新書だったもの(『ゾウの時間ネズミの時間 サイズの生物学』中公新書)を子ども向けに絵本にしたもの。

  ゾウの体感している時間と、ネズミの体感している時間は異なる、ということを分かりやすく説明してくれます。だけど説明っぽい感じはしません。絵もきれいだし、読んでいてとても面白いです。「とても感動した、これは子どもに読ませるだけではなくて、大人も読むべき絵本だ」といっている大人の人をよく見かけるような気がします。

  体の大きい生物ほど時間の流れるのが遅いのだそうです。どんな動物でも、一生の内の鼓動の回数は決まっていて、約20億万回。だからゾウに比べて、ネズミの方が命が短いということにはならないそうです。そうだったんだ・・・

  今まで全然知らなかったです。「今年10歳ですが、人間に換算すると60歳くらいということになります」という説明とかがよくあるけど、それはこの絵本と同じように考えてみた場合なのかもなぁ、多分。まぁその他にもいろんな条件を組み合わせて、いろいろ考えているのかも知れないけど。

  面白い絵本だなぁと思います。


自森人読書 絵とき ゾウの時間とネズミの時間
★★★★

著者:  岩合日出子
写真:  岩合光昭
出版社: 福音館書店

  パンダかわいい・・・ 小さいぱんだの子たちが転がっていると、ぬいぐるみみたいです。パンダの絵本(写真が載っているから絵ではないけど)です。1ページめくるごとに、パンダが増えていきます。1ぱんだ、2ぱんだ、3ぱんだみたいな感じで。

  この頃、本の中でよくバンブーに出会います。バンブーというのは竹のことです。まず、この『10ぱんだ』のなかに竹が登場しました。あと、最近、森見登美彦の『美女と竹林』という本を読んだのですが、その作品はそのものずばり、森見登美彦の美女と竹林に対する(おかしな?)愛を書き綴ったものです。竹が全編に現れていました。そして、東野圭吾の『トキオ』という作品にも、「ボンバ」という酒屋が登場し、少しだけだけど「竹」がらみの謎解きみたいのが登場します。こういうどうでもいいような偶然は楽しいです。本当にどうでもいいんだけど。

  パンダというのは、木に上ったりもするとは知りませんでした。なんか見た目とは違って身軽なんだなぁ。『10ぱんだ』を読んでいて、かわいいかわいい、と言いつつ、実はパンダのことをほとんど知らない自分に気付かされました。『パンダ育児日記』というのも並べて読んでいます。そちらは、絵本ではなくて、中国の山奥でパンダの子ども達を育てるために頑張っている人たちの日記・記録です。詳しい文章もあり、そして貴重な写真も載っていて興味深いです。

  『10ぱんだ』は楽しいなぁ。見ていてなごむというのか。楽しいです。


自森人読書 10ぱんだ
★★★

著者:  山本勉
出版社: 朝日出版社

  仏像の絵本です。難しい解説とかはほとんど無くて、分かりやすく、簡単に仏像のことが説明されています。小学生でも読めてしまう感じです。

  仏像のことを全然知らなかったので、勉強になりました。日本というか、アジアの歴史と仏像って本当はものすごく密接な関係にあるような気がします。例えば、日本の大きいのだと、奈良の大仏というのがあるけど、あれってものすごく莫大な資金がなければ作れないはずです。

  どうしてあんなものが作られたのか、といえば、やっぱりその当時、大仏をつくるという文化(というのかなぁ?)があったから、ということがまずあります。あと、それを作ろうと思って、実行できるほどの権力を持った人がいたから、ということがあるし、それに協力する人たちもいた、ということもある。その背景について、『逆説の日本史』という本の中で、著者が独特の推理をしています。それとか、読んでいるとなるほど、と思います。

  この「仏像のひみつ」はそういうこんがらがるような歴史のはなしではなくて、絵を見つつ、ちょっと仏像のことを知ることが出来ます。読んでいると、時代ごとに仏像が違うらしいということが分かったりして、面白いです。


自森人読書 仏像のひみつ
★★★★

著者:  丸木俊、丸木位里
出版社: 小峰書店

  第二次世界大戦のとき、日本の中で唯一地上戦が行われたのが、沖縄です。沖縄県民のうち、3人に1人が亡くなりました。たくさんの方が亡くなり、生きのびた人たちもほぼ全員が、祖母や祖父、母親や父親、兄弟姉妹、娘や息子、叔父や伯母といった親族の大勢を失いました。どれだけ沖縄戦はひどいものであったかが分かります。

  沖縄戦ののちに、沖縄の人たちが生み出したのが、ヌチドゥタカラ(命こそ宝)という言葉です。この絵本を読むと、その言葉の意味が分かってきます。自由の森学園中学3年では、沖縄に修学旅行に行きますが、ぜひ行く前にこの絵本を読んでおくといいと思います。いや別に、修学旅行に行かない人も読んでみて欲しいです。自由の森学園の図書館にもあると思うので。

  2007年度・中3の修学旅行では沖縄へ行きました。平和について学んできたのですが、その事前学習として、丸木美術館に行きました。画家 丸木俊、丸木位里さん夫婦の絵が飾られているところです。少し蒸し暑い中(冷房がついていないので)、数時間周って見ていきました。

  沖縄戦のときの様子が、2メートル以上の紙に、大きく、たくさん描かれていました。どれも暗くて、ほとんど黒と赤の絵の具だけしか使われていません。戦争の暗さが伝わってきます。でも事実がそのまま描かれているわけじゃありません。絵の中の死体は、まったく腐乱していないのです。どうしてなのだろうか、と考えてみると・・・ 「そのまま」を描いても、「そのまま」にはならないということのような気がしました。(スケッチでは終わらない絵を目指した、というか)

 

  沖縄戦のときの酷いありさまをそのまま描いたら、グロくて、ショッキングな絵になります。見た人が、「うわぁ・・・」と思うような絵が出来上がります。でも伝えたいのははそんな単純なことではない。「赤い血にまみれた戦場」を描きたかったのではなく、もっと暗くて、黒く塗りつぶされて絶望しかない状況が伝えたかったのではないか、と思います。

 あともう1つ興味深いことがあります。よく見ると、絵の中の人たちには、目玉が描きこまれていないのです。それは何を表すのか? 難しい問いです。・・僕は、瞳(ひとみ)の輝きとは、命もしくは希望を表すのではないか、と思っています。「画竜点睛」という言葉があります(よく「画竜点睛を欠く」というふうに使われるけど)。壁に描いた竜に、瞳を描き込んだ途端に竜が天へ昇っていってしまったという逸話です。瞳は、絵の命だ、という言葉もあります。だから瞳は命じゃないか、と思うのです(短絡的かなぁ・・)。

  それに、絵の中の子どもたちには、瞳が描き込まれています。それは未来に希望を託した、ということのような気がします。

  丸木美術館、とにかく興味深いし、素晴らしいです。埼玉にあるのだし、ぜひ行くことをおすすめします。自由の森学園もそうなのですが、丸木美術館もお金に困っているそうです。やっぱり美術館の経営っていうのは難しいよなぁ。とにかく、丸木美術館がなくならないためにも、行ってみて欲しいです。


関連リンク
丸木美術館 ウェブサイト

自由の森学園中3 沖縄修学旅行


自森人読書 おきなわ 島のこえ ―ヌチドゥタカラ



★★★

著者:  宮沢賢治
画:  茂田井武
出版社: 福音館書店

  ゴーシュは楽団「金星音楽団」のセロ(チェロ)弾きでした。「金星音楽団」は、町の音楽会で「第六交響曲」を演奏しようとします。ゴーシュは、下手なので毎度毎度怒られていました。そうしてしょぼくれてしまったゴーシュのもとに、毎晩いろんな動物がやってきます。動物達は色んな理由をつけて、ゴーシュのセロを聴きたがるので、ゴーシュは毎晩弾いてやりました。

  そして、本番の日、動物達のおかげかゴーシュは「第六交響曲」の演奏をうまくできて拍手喝采をあび、さらにアンコールにも応えて・・・

  どうもうまくいかなくて、困っているゴーシュ。彼は、夜毎に現れる動物達に聞かせてあげる、ということを通して何かを見つけます。ゴーシュの前で動物達、例えばねこがセロを聴いている夜の一場面を想像すると、なんとなくおかしくて、面白いなぁという気がしました。

  ものすごーくうがった見方をする人もいるけど、まぁまず絵本として楽しめばいいんじゃないかなぁ、と僕は思っています。深い物語はそのままでもうすでに深いんだから。


自森人読書 セロひきのゴーシュ
★★★

著者:  原ゆたか
出版社: ポプラ社

  主人公は、かいけつゾロリ。いたずらの王者になって、可愛いお嫁さんをもらって、自分の城を持つことを目指しています。悪人というわけではなくて、なんというか心優しいおっちょこちょいのきつねです。子分はイシシとノシシ。イノシシの兄弟です。3人は旅を続けていきます・・・

  小学二年生の頃、好きだったおはなしです。その頃でていたゾロリシリーズの本はみんな読みました。最初のうちは、まぁ絵本なんだけれど、だんだん新しい巻になるごとにマンガっぽくなってきているなぁ。駄洒落というか、おやじギャグを子どもたちに流行らせた本です。

  今でも置いてあるとたまに読むんだけど、やっぱり面白いなぁ。まぁある意味くだらないけど、すらっと読めます。昔の童話なんかよりは、このかいけつゾロリのほうがよっぽど子ども達の読書ばなれを防いでいる気がします。この読みやすさというか、筋というのはやっぱり傑作だなぁ、と思います。

  ヒーローぶってないところが受けているのかなぁ。偽善者より偽悪者の方がかっこ良いし(偽悪者なんて言葉あるのかな)。この分かりやすさがいいんだろうなぁ、多分。


自森人読書 かいけつゾロリシリーズ
★★★

著者:  佐野洋子
出版社: 講談社

  知っている人も多いかも知れません。1977年出版ということなので、もうかれこれ40年間もいろんな人に読まれている、ということになります。100万回生きた猫の物語です。100万回生きてきて、そのたびにいろんな人から愛を受けます。でもとらねこは、別になんとも思っていません。とらねこは「100万回生きた」ということを誇りに思っているだけでした。けれども100万回目の野良猫になったときある白ねこと会います。とらねこは、白ねこを愛し、白ねこが死んだとき、はじめて泣くのです・・・

  100万回生きたとしても、幸せとはいえないんじゃないの? と問いかけられているような気がします。本当に誰かを愛してこそ、生きていると言えるのかも知れません。そして、本当に嬉しいということを知ってこそ、本当に悲しいということが分かる。

  主人公のねこは100万回生きてきました。そしていろんな人に愛されてきたけれど、最後の1回のときにはじめて、いろんな人から受けてきた愛に応えられるだけの何か、を手にいれたのだろうなぁ、と思います。それまでは「悲しい」という感情すら存在していなかったのではないか。からっぽだったような気がします。幼稚な自分を愛する心だけしかなかったのです。

  でも、それは果たして幼稚なのだろうか、という気もします。だって、本当に嬉しいことを知ってしまったなら、同時に本当に悲しいことを受け入れなければならなくなります。それはいやだ、と拒否するのも1つの選択肢かも知れません。俺はそんなに強くないから、自分だけを愛して生きるんだ、というのもありかなぁ、と思います。ひとを愛せない人は心が弱い。それは幼稚というのとは違う気がします。

  あれ、けど弱いということが幼稚なことなのかな。そうだとすると、やっぱり自分以外を愛せないものは幼稚なのか。

  まぁ難しく考えずにただ読んでも面白いです。


自森人読書 100万回生きたねこ
★★★

再話:  A・トルストイ
出版社: 福音館書店

  誰でも知ってるロシアの民話です。

  おじいさんのうえた株が、とってもおおきなかぶに育ちます。おじいさんだけではとても引っこ抜けないので、おばあさんを呼んで来ます。おじいさんとおばあさん2人でも引っこ抜けないので、孫娘を呼んで来ます。それでも引っこ抜けないので、こんどは犬を呼んでくることに・・・。という感じのおはなしです。

  僕は小さい頃、べつにロシアの民話だということも知らず、絵本を読んでもらっていました。自由の森学園にきて、社会科の授業の時間に、むかしこの物語を教科書に載せることはできなかった、ということを知りました。なぜか、というとこれは仮想敵国・ソ連(ロシア)の物語であり、「みんなが一致団結」というのは社会主義だから。これは社会主義を宣伝するものだというのです。

  どんな屁理屈だ、と僕は思いました。英語の授業の時間に、この「おおきなかぶ」を英語で読みました。やっぱり親しみやすくて、みんな知っているから使われるのだと思います。社会主義を宣伝するおはなしなんかではないなぁ、と思いました。

関連リンク
英語の授業 おおきなかぶを読む
社会の授業 (9)続き いろんな検定不合格

自森人読書 おおきなかぶ
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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