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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  安部公房
出版社: 新潮社

  『笑う月』は安部公房の短編集。『催眠誘導術』『笑う月』『たとえば、タブの研究』『発想の種子』『藤野君のこと』『蓄音機』『ワラゲン考』『アリスのカメラ』『シャボン玉の皮』『ある芸術家の肖像』『阿波環状線の環』『案内人』『自己犠牲』『空飛ぶ男』『鞄』『公然の秘密』『密会』収録。

  エッセイと掌編小説が17篇収められています。

  奇妙な感覚を持ち合わせた不可解な小説を書くためにはどうすればいいか、少しだけ分かります。安部公房は、夢というものを小説に取り入れているそうです。そのまま使うというわけではないようですが、ネタにするみたいです。

  しかし、夢は随分と扱いづらいもののような気もします。他人の夢のはなしほどつまらないものはない、という言葉があります。

  AからBへと渡されるタブについての考察がつらつらと綴られている『たとえば、タブの研究』とか、夢がそのまま綴られているときはそれほど面白くはないです。とはいえ、少しは愉快です。そこまで理詰めで考えるのか、と感心します。理詰めで考えるからこそ、面白い小説が生まれるのだろうか、と考えてしまいました。

  教科書に収録され、自由の森学園の授業でも扱っている『公然の秘密』は、最も取っ付きやすくて分かりやすい「小説」になっています。というか『公然の秘密』以外の作品が提出されたら困ってしまうだろうなぁ、と感じます。


自森人読書 笑う月
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★★★

著者:  金井美恵子
出版社: 朝日新聞社

  金井美恵子のエッセイ。

  どこまでも途切れなく続く文章は、読みづらいけど、味があります。切れ目がない文章は悪文といわれることもありますが、よく練られていれば悪くない気もします。

  そして、とにかく金井美恵子の毒舌が素晴らしいです。構成力に欠け、その上変な理屈を振り回す島田雅彦をこきおろし、高尚そうな言葉を発する割には文学がまったく読めていない文芸評論家・福田和也を嗤い、レイシスト石原慎太郎を叩き、バカなアメリカ大統領ブッシュを非難し、稚拙な小説を書く柳美里などほとんど歯牙にもかけず、リベラルな立場に立つことで知られる文芸評論家・加藤典洋のオヤジ臭さとセンスの悪さを指摘し、かの『桃尻娘』を書いた橋本治がまるで村上龍のようなオヤジに変貌したことに首を傾げ、阿呆みたいな素振りを見せる高橋源一郎を観察し、対談相手の本を読んでもいない(読めない?)すが秀実をあげつらうのです。

  とはいえ、全ての評論家を否定するわけではありません。まともなことを書いていると彼女が思う人、たとえば蓮實重彦などは評価しているようです。そして、あとは愛する映画のことが延々と書かれています。とてもついていけませんでした・・・

  ポンと批判が提出されるので、それほど、くどくはないのですが、いちいち鋭いです。切れ味抜群。ここまで書いて良いのか、と心配になるほど。

  しかし、そういうふうにして世間から離れ、一人で闘う皮肉屋の文学者というのはかっこいい、と思いました。


自森人読書 目白雑録(ひびのあれこれ)
★★★★★

著者:  斎藤美奈子
出版社: 筑摩書房

  誰も言及しないけれど実は「妊娠小説」というジャンルがはっきりと存在している、と著者は主張します。望んでいないのに子どもを授かってしまうことを妊娠と呼びますが(嬉しい場合は懐妊・おめでた)、妊娠を扱った小説は非常に多く、その先祖を探すべく時代を遡っていけば明治にまでいきつくのだそうです。妊娠小説の父は森鴎外の『舞姫』、そして、妊娠小説の母は島崎藤村の『新生』。その系譜は途切れることなく現在にまでいきつくのです・・・

  『妊娠小説』は文芸評論家・斎藤美奈子が始めて出版した本。

  こういう切り口があったのか、と感心させられました。文芸評論なのに、非常に分かりやすく、それでいて面白いです。

  妊娠小説は、ほとんどの場合、なぜか必ず「生む」ことを望む女が、「生まない」ことを望む男の意思に押さえつけられる物語として捉えることができるのだそうです。結局、男性の優位が保たれているところを見ると保守的ともいえるわけです。

  そしてきっちりとした型が見られるのだそうです。男が妊娠を告げられたときの反応も、女が妊娠に気付くときの反応もワンパターン。登場人物たちはぐだぐだ言い訳して、絶対に避妊しないし、その言い訳は妊娠した後に書かれている・・・ そんな共通性がみられるのか、と面白すぎて笑ってしまいました。

  「妊娠」はけっこう大事だから多くの作家たちが、都合よく利用するのだという主張には納得します。

  石原慎太郎の『太陽の季節』も、倉橋由美子の『パルタイ』も、村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』も、村上龍の『テニスボーイの憂鬱』も妊娠小説。かすり気味だけど、大江健三郎の『死者の奢り』なんかもやっぱり妊娠小説。そして、三島由紀夫の小説はたいてい妊娠小説と聞いて驚きました。

  日本文学に興味がある人には絶対におすすめ。何に対しても迎合せず、距離をとる斎藤美奈子のバランス感覚とフェミニズム的視点がとても良いです。


自森人読書 妊娠小説
★★★★

著者:  大森望
出版社: 太田出版

  大森望がSFと名のつくものをとにかく片っ端から読み、時には褒め、時には貶していく辞書みたいに分厚い本。つまらない本は徹底的に貶しているところが凄いし、楽しいです。そこまで書くか、と心配になるほど。時にはSF関係者の動向や集まりや結婚やSF担当編集者になるための方法などを綴っているため、ほとんどエッセイに近いのですがそれも面白いです。

  SFというものへの愛が感じられます。

  SFに興味がある人、少なくともSFを読んでいる人でないと楽しめないかも知れません。僕も海外SFを全く読んでいないので、ついていけない部分もかなりありました(これから海外の本も読もうと思います・・・)。しかし、SF好きには堪らない1冊だと思います。おたくたちがSFに傾けている情熱と、その結果生まれる熱い空気が伝わってきます。

  9割のクズや駄作がSFというジャンル全体を支えている、ということを信じ、駄作すらも読み通していく大森望の読みっぷりには感動を覚えます。ここまで読めたら本当に凄い。

  じょじょにガチガチのSFではない領域にまで書評の範囲が広がっていくのには驚くしかないです。小野不由美、京極夏彦を大絶賛するのはどうかと思ったりもするし、まぁ好みが合わない点もあったのですが、そこも含めて面白かったです。書評というのは芸なんだなぁ、と感じます。

  読み終わったとき、これからもたくさん本を読もうと思いました。


自森人読書 現代SF1500冊 乱闘編 1975―1995
★★★

著者:  麻野一哉、米光一成、飯田和敏
出版社: 原書房

  ベストセラー本をゲームにしてしまい、そこからその本や物語のルールを見出そうという企画。麻野一哉、米光一成、飯田和敏がべらべらと喋ったものが、そのまま収録されています。

  今回は、『世界がもし100人の村だったら』/『愛のひだりがわ』/『冷静と情熱のあいだ』/『煙か土か食い物』/『チーズはどこへ消えた?』&『バターはどこへ溶けた?』/『模倣犯』/『あらしのよるに』/『白い犬とワルツを』/『虹』/『新ゴーマニズム宣言SPECIAL戦争論2』/『PLATONIC SEX』/『新「親孝行」術』/『あらゆる場所に花束が…』/『痛快!憲法学』/『FOCUS』/『バトル・ロワイアル』のゲーム化が行われています。

  力が抜けます。けれど喋っている三人はなかなかに読書通なので(『世界がもし100人の村だったら』とか、『チーズはどこへ消えた?』とか、相田みつをとか、そこらへんをかるーくかるーく扱っていることからもそれがよく分かります)、なかなかに面白いです。舞城王太郎はダサイけど良い、というのには同感。やっぱり本読んでいるんだろうなぁ、と思わされます。

  けれど、もう少しだけ各々が好きな作品を明確にして欲しかったかなぁ。演出されたへらへらは愉快なのですがいまいちよく分からない。

  「ゲーム化会議」を全てに適用していったら面白いかも知れない。しかし、サブカルチャーの片隅まで知っている三人だからこそまとまっていないのにまとまっている面白い鼎談ができるわけで、普通の人が同じことをやっても全然面白くない気がします。


自森人読書 ベストセラー本ゲーム化会議
★★★

著者:  尾崎真理子
出版社: 筑摩書房

  1980年代以降の日本文学史をたどっていくことができます。非常に分かりやすいです。押さえておくべき作家の名がきちりきちりと押さえてあります。

  大江健三郎のノーベル賞受賞以前・以後を分け、以後の文学史についてを分析。よしもとばななと村上春樹を重視。とくに村上春樹には一章を割き、彼の遍歴を綴っています。それから、金原ひとみ、綿矢りさといった若手小説家がもたらした衝撃や、変容しつつある日本人の感性のことについても分析されています。

  「純文学」系の小説家たちのことはかなり詳細に掴むことができます。しかし、「純文学」系以外の小説家の説明にはけっこう間違いがあるし、扱いが悪い。尾崎真理子は、たとえば舞城王太郎をライトノベル作家の代表としてあげています。だけど、舞城王太郎よりも上遠野浩平や、谷川流などの方が代表的なライトノベル作家といわれているのではないか。

  舞城王太郎をライトノベル作家として扱うこと自体が多分、間違っています。いかにもラノベ系な雰囲気を漂わせているし、それらの流れを継いでいるけれど、元々は清涼院流水などを輩出したメフィスト賞から、すなわち異端的な新本格ブームからでてきた人です。

  もう少し純文学ではない作品にも目を向けてほしかった・・・ まぁ、「純文学」系や「文壇」を中心にしないとしかたないともいえます。ケータイ小説のことなどまで含めようとしたら、やっぱりおさまりがつかないだろうし。

  最後は少し走りすぎているような気もしました。一つ一つのことについて詳しく読みたい、と感じました。「70年代以降の小説は全てクズ」とか言い放つ人たちに比べて尾崎真理子は良心的ではないかと思います。ちゃんと読んでいるわけだから。ぜひ他の文芸評論も読んでみたいです。


自森人読書 現代日本の小説
★★★★

著者:  柄谷行人、浅田彰、岡崎乾二郎、奥泉光、島田雅彦、すが秀実、渡部直己
出版社: 太田出版

  編者達が、カノン(正典)だと思うものを列挙した本。反時代的なブックガイドを自称しています。かつての教養主義をある程度は好意的に捉え、まぁいかにも必読書として挙げられそうな作品をあえて挙げているわけです。プラトン、アリストテレスなどから始まります・・・

  「これらを読まなければサルである」と謳っていますが、虚仮威しにしか聞こえないです。ありきたりの名著一覧みたいな感じだし、解説文は全然面白くない。というか解説になってない。ぐちゃぐちゃしていて、自分たちはほとんど何も読めていないのだ、ということを高らかに自白しているような中身です。

  「中国の文学などには詳しくないので入れなかった」「これからアジアで考えていくべきですかね」とかそんなようなことを言って、アジアの文学には目もくれないところには疑問を感じます(唐詩選、阿Qくらいしか入っていない)。

  「1970年代以降の日本の小説は全部カス、終わってる」みたいな主張には反感を覚えます。全てを一緒くたにして論ずるということには無理があるのではないか。ある程度は理解できるのに、どうしても編者達の感覚がもう終わっているのでは、と反論したくなってしまいます。

  彼らは「日本の哲学/文学は退化しつつある」「終わっている」みたいなことをいつも言い張るけど、昔から文学を読む人や哲学をやっている人なんて少数派では? それにいつの時代にも「昔は良かった」論者はいるわけだし。まぁ、そう深刻になる必要はないのではないか。

  まぁ、あえて『必読書150』という本を出版し、風波をたてて煽る人たちは応援しないでもないのですが。


自森人読書 必読書150
★★★★

著者:  斎藤美奈子
出版社: 筑摩書房

  怒涛の738ページ(約5センチ)。延々と書評が続きます。しかし、飽きません。サクサクしていて、読みやすいです。斎藤美奈子は本当に凄い人だと思いました。

  「小説と随筆の本」「文芸評論と日本語の本」「本のある生活」「社会評論と歴史の本」「文化と趣味の本」に分かれていますが、どこから読んでも大丈夫な感じです。どれも面白い。僕は「小説と随筆の本」が一番読んでいて楽しかったです。

  笙野頼子の本をもっと読まなきゃ、と思いました。あとは、姫野カオルコ、石黒達昌、野中柊、田口ランディ、三浦俊彦といった人たちの作品も読んでみたいです。書評の本を読むと、読みたい本がどんどん増えて大変です・・・

  斎藤美奈子は「フェミニズム系の批評家」と言われています。確かにその系統の批評家につながる人なのだろうけど、彼女はフェミニズムのだめな部分もきちりと指摘してみせます。さすがです。そして、「右にも左にも疑問を覚える」と書くようなさめた視点を保持しつつ、実はかなり反権力的なところも格好良いです。まぁフェミニズムの人だから、なのかなぁ。

  読後、大森望・豊崎由美の『文学賞メッタ斬り!』などの方がもっと気軽で、バンバン批判がでてきて面白かったなぁ、と思ってしまいました。斎藤美奈子の方が少し上品、ということか。家に1冊ズデンと置いておきたいけど、絶品かどうかは疑問。


自森人読書 本の本―書評集1994-2007
★★

著者:  さくらももこ
出版社: 講談社

  さくらももこのエッセイ。なんというか笑えます。とくにヒロシが。

  僕は、『ちびまる子ちゃん』は読んだことも見たこともほとんどないし、別に好きでもありません。でも原作者のさくらももこという人は面白い人だなぁと感じました。息子に自分がさくらももこであることを隠すためにビデオまで作ってしまったり、「家族の前でおならをしますか」と聞いてまわったり。元気が凄いなぁと感心します。

  「さくらももこはお金持ちになってから傲慢になり、サービス精神が失われた。それが鼻につく」という感想を書いている人も多いのですが、僕は楽しめました。全体に漂う滑稽な雰囲気の中では、その「無意識の金持ち意識」も笑いを誘う一要素として機能しているのではないか、と思います。

  ヒロシのコイが死亡していくのを放っておくのは、どうかと思ったけど。

  延々とどうでもいいようなことが書いてあって、本当にもうどうでもいいと言いたくなるけど、それでもそれなりに読まされます。同じことを繰り返す文章が、いい雰囲気を醸し出しています。かなり考えて文章をつくっているのだろうなぁ、と思います。

  けっこう薄いし、文字は大きいのでさくっと読めてしまうのですが、なかなか良いです。


自森人読書 さくらえび
★★★

著者:  向山昌子
出版社: 晶文社

  紀行文+イラスト。

  美味しそうな食べ物の数々。その地域の人たちが「普通」に食べているものを求めて、アジアを旅していった記録だそうです。イラストを見ているだけでも面白いです。

  食べ物は、その文化を映し出す鏡なのかも知れない、と感じました。たとえば、アラブ首長国連邦では伝統食はすでに誰も食べていないそうです(わずかに砂漠の民の人たちが昔どおりの生活をしていらしいけど)。石油という富を生み出す魔法みたいなものがあるから、世界中からなんでも取り寄せられるので、伝統食というものが消えうせてしまったそうです。

  あと、どうでも良いことなのてすが。モロヘイヤのスープが、エジプトではお味噌汁みたいに飲まれているんだそうです。あのとろとろしたものをたくさんの人が飲んでいるというのには、びっくりだなぁと思いました。別にまずくはないけど、そこまで飲みたくなるのだろうか。

  食から文化を見ることも面白いかもしれない。自由の森学園の人間生活科の授業ともつながるかも知れない。ちょっとだけアジア紀行したくなりました。


自森人読書 アジアごはん紀行
★★★

著者:  寺田寅彦
出版社: 岩波書店

  「芸術感覚と科学精神との結合によって完成した」と解説者が述べる随筆集。

  『どんぐり』『龍舌蘭』『花物語』『旅日記から』『先生への通信』『科学者と芸術家』『物理学と感覚』『病院の夜明けの物音』『病室の花』『丸善と三越』『自画像』『芝刈り』『球根』『春寒』『春六題』『蓑虫と蜘蛛』『田園雑感』『ねずみと猫』『写生紀行』『笑い』『案内者』『断水の日』収録。

  彼は明治・大正・昭和時代の人なのですが、とても文章が読みやすいことにまず驚きました。やっぱり、明治維新は大きな境目になっているなぁと感じます。それ以前のものは、ほとんど読めないです。明治維新より前のものは、ほとんど外国語と同じといってしまっても良いのではないか、と僕は勝手に思っています。まぁ「日本語」は平易になったかも知れないけど、その代わりとして国家によって方言が潰され、日本語は狭まったともいえるけど。

  『どんぐり』はとても感傷的な作品。だけど、そのあとの随筆には理論っぽいのが続々とでてきます。心について考察しているところでは、森博嗣を連想するような言葉がでてきます。

  最初のあたり、『三国志』『八犬伝』が時折登場したり、「関羽」という文字列があったりするので、おーと思わされます(たぶん『花物語』)。今も昔も読まれている共通のものがあることに感動する、というか。あと、『病院の夜明けの物音』には共感しました。寝ていると、音に敏感になる、というより気になってくる、ということが書かれています。暗い中、1人だと時計の音とかが気になり出すんだよなぁ。なんだか。

  何かをただ描写していたはずなのに、時々ぽんと飛んで、文化論みたいなものにまで発展するところがとても面白いです。そういうふうに連想していくのか。感心させられます。飛躍しているのに、唐突ではなくて、どこか流暢さがあるんだよなぁ。

  『自画像』は面白いです。寺田寅彦が病気で安静にしている時、自画像を描こうと思い立ち、何個か描くのだけどなかなか難しいと述べているもの。彼と、友達の画家とのいろんなやりとりとかは、自由の森学園の美術の授業でも使えそうな感じです。『笑い』は、笑いという現象の分析。笑ってはいけないところでどうしても笑いたくなってしまう自分はおかしいのだろうか、と寺田寅彦が書いているのですが。「何々をやってはいけない」と言われると、それをやりたくなるというのは誰にもあることだよなぁと共感します。どうしてなんだろう。


自森人読書 寺田寅彦随筆集1
★★★★★

著者:  豊崎由美
出版社: 学習研究社

  『そんなに読んで、どうするの?』を読んで、その面白さに感動。「書評っていうのは、このようなもの」とインプットされてしまいました。というわけで、僕にとって初めて邂逅した書評家が、豊崎由美になってしまったわけなのですが。豊崎由美の書評は、ほんとに面白いです。

  この本は、著者が読んだ本を3段階評価し、それに短い書評をつけたもの(もう少し1冊1冊に長い書評をつけて欲しいと思ったけど、そうすると紹介できる本が減ってしまうからなぁ・・・ そこはしょうがないか)。その3段階評価とは下のようなもの。

  金の斧(親を質に入れても読め!)
  銀の斧(図書館で借りられたら読めばー?)
  鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず?!)

  豊崎由美は、とにかくつまらない作品はけなしまくり、好きな作品はほめまくります。とはいっても、そこまで批判している本は多くはありません。稚拙な文章、「泣かせる」設定なケータイ小説系の小説や、あとは大作家のポルノ紛いの小説(渡辺淳一『愛の流刑地』とか)には激しく噛み付くけど、その他はだいたい「金の斧(読むべき)」ばかり。

  これじゃ斧の色の意味が、薄れるのではないか。もう少し全体的に評価を下げても良いんじゃないかな、とも思ったけど、まぁこのくらいでちょうど良いかも知れない。とにかく、本への愛が伝わってきます。愛しているからこそ、厳しくする、みたいな感じです。

  最後の袋とじの部分では、ここぞとばかりに某大作家に噛み付いています。爽快というしかない。

  書評を読むと、毎回読みたい本が増えていってしまいます。あれも読みたいし、これも読みたいという感じになってしまう。困ったなぁ・・・


自森人読書 正直書評。
★★★

著者:  森見登美彦
出版社: 光文社

  森見登美彦が、出版社の人たちと一緒に竹林を整備するため、竹を伐っていくのを綴ったエッセイ。ほんと、ただそれだけです。でも読んでいるだけで笑えてくる。森見登美彦の文章が面白いし、森見登美彦の妄想が面白いです。

  これ読んで怒り出す人もいるかもなぁ。あとは呆れる人もいるかも知れない。これはいったい何なんだ、ということで。でも僕は面白いと思います。

  タイトルは、『美女と竹林』ですが、ほとんど美女なんて登場しません。なので、著者、森見登美彦は「竹林」と「美女」を強引にくっつけたりしてみるけど、いまいちよく分からない感じになってしまいます。だから、結局のところ森見登美彦&それを手伝う出版社の人たちと竹林の話、なのです。

  そうして、竹を伐りたいのに伐る暇がなくて(小説を執筆して、いろんな賞の授賞式に出席して・・・)、それでもたまには竹林へと出かけていく、といふうな話がぐだぐだ延々と続いていきます。

  森見登美彦の竹林への愛が爆発している、としか言いようがない・・・ 妄想が妄想を呼び、いったいぜんたいどこまでいくのか楽しくなってきます。最後の辺りになるとエッセイでなくて、ほとんど妄想によってつくられた物語になってしまいます。というか、半分くらいこれは小説みたいなものだよなぁ。勝手に「数十年後の未来」をつくってしまっているのだから・・・

  『美女と竹林』凄く面白いんだけど。ここから森見登美彦ワールドに入っていったら、迷ってしまうかも知れません。『太陽の塔』や、『夜は短し歩けよ乙女』から読むのがおすすめかなぁ、という気がします。とにかくちょっとこの時代がかったような言い回し、凄く面白いです。


自森人読書 美女と竹林
★★★★

著者:  星野道夫
出版社: 福音館書店

  アラスカの自然の厳しさや美しさ、そしてそこに住む動植物と人々の姿を撮り続けた写真家・星野道夫。熊に襲われて1996年に亡くなりましたが、今でも彼の写真は、たくさんの人に愛され続けています。そんな彼の撮った写真が、『アラスカたんけん記』にも、たくさん載っています。どれも良いなぁ。

  そもそもどうして彼は、アラスカという地に憧れたのか、ということがこの本を読むと分かります。小学生にも読めるくらい分かりやすくて、良い文章です。

  星野道夫は、1枚の写真と出会い、それに惹かれてアラスカへの憧れを抱くようになりました。

  そして、19歳の時、アラスカのシシュマレフ村に行こうと決心。シシュマレフ村の村長に、直接手紙を送りました。全然届くかも分かりませんでした。だけど、しっかりと返信が返ってきて、彼はアラスカに渡ることになります。日本をぽんと飛び出していく決心を固めて、手紙を送るというのは凄く勇気がいることだよなぁ。でも、若いうちにそのくらいのことができたら楽しいだろうなぁ、とも思います。

  やっぱり、オーロラの写真がきれいです。だけど、それだけでなくて、白い雪原や、アラスカの樹林や、熊たちや、エスキモーの人々。それら全部が、印象的です。日本となんて違うんだろうか。やっぱり、その地に実際に行ってみないと、本当の意味ではその地の美しさの核心を理解することはできないのかも知れません。だけど、写真と文章によって伝わってくるものも確かにあります。

  そういえば、今、シシュマレフ村は地球温暖化の影響を受けて、沈みかけているというはなしを聞いたことがあります。う~ん、どこにも環境問題が影を投げかけているんだなぁ。できたら、1度行ってみたいなぁ、と感じました。


自森人読書 アラスカたんけん記
★★★★

著者:  松下竜一
出版社: 講談社

  『潮風の町』の著者である松下竜一は、もともと豆腐屋だった人です。句集『豆腐屋の四季』を自家出版したらヒットし、作家になりました。信念を持って世の中と対峙した気骨ある人を取り上げたノンフィクションをたくさん書いています。

  隔離されたハンセン病患者の詩人・伊藤保の評伝『檜の山のうたびと』、下筌ダム反対運動を書いた『砦に拠る』や、関東大震災の時、陸軍憲兵隊に殺された大杉栄と伊藤野枝を取り上げた『ルイズ 父に貰いし名は』、アナキスト大杉栄を影で支えた和田久太郎を取り上げた『久さん伝 あるアナキストの生涯』、天皇暗殺すら目論んだテロリスト集団・東アジア反日武装戦線を取り上げた『狼煙を見よ』などなど。

  ダム建設という問題に取り組んだ松下竜一は、環境問題にも目を向けます。彼は、「環境権」を世間に広めた人物でもあります。と、ここらへんで作家の紹介は終えて、『潮風の町』の感想へ。

  『潮風の町』は、豆腐屋をやめたあと小説家としてやっていけるのだろうかと悩み、さらに病気に苦しみながらも、妻や息子との日々の生活の中で、ささやかな幸せを見つながら生きていく松下竜一のエッセイです。こういう感傷的、とすらいえるような文章を書く人だったんだなぁ・・・  ちっぽけで弱い1人の人間としての松下竜一が書かれていて、とても興味深いです。

  病院に入院している間は退屈なので、渡したときの息子たちが喜ぶ姿を思い描きながら、いらなくなった絵本のキャラクターを切り抜いてみたり。お遊びということでトランシーバーで妻や息子と、「隊員ごっこ」をやったりしてみたり。
  <もしもし、おとうさん、ぼくけんちゃん、おとうさんどうぞ>/<もしもしこちら隊長ドラゴンだ。今日から健ちゃんをケン隊員に任命する。・・・こちら隊長ドラゴン、ケン隊員応答せよ><はい、おとうさん、ぼくケンたいいんです>というような感じで、とても楽しそうです。

  しかし、松下竜一は子どもの頃からとにかく体が弱い人です(幼児の頃、高熱で右目を失明)。病院に入院するというのはよほど悪いのです。それでも、家族とのつながりのなかに喜びを見つけて、生き抜いていくんだなぁ。もしかしたら、苦しみの中にいるからこそ、逆に楽しみが際立つのかも知れない、と思いました。


自森人読書 潮風の町
★★★★

著者:  灰谷健次郎
出版社: 角川書店

  走ることによって生きることが豊かになる・・・
  『遅れてきたランナー』は、そんなメッセージがこめられている本です。

  だいたい下のような構成。
   1章 灰谷健次郎のエッセイ
   2章 淡路島座談-灰谷健次郎・高石ともや・山西哲郎
   3章 わが「食学」考
   4章 「住」と自然を語る
   5章 沖縄・渡嘉敷島へ

  一章のエッセイの中では、灰谷健次郎の走りの姿勢が書かれています。競争することではなくて、楽しむということを大切にするのがスポーツの本質、と彼は説きます。ホノルルマラソン出場1年目は飛ばしすぎて苦しみながら歩いてゴール。それからゆっくり楽しみながら、走ることをみにつけていくようになったそうです。

  2章の淡路島座談を読むと、機械文明への痛烈な批判が強く感じられます。灰谷健次郎・高石ともや・山西哲郎3人が3人とも、同じことを述べています。確固たる思いをもって走る人たち、かっこ良いです。しかも決して速さを競うのではない。走ることが、現代の文明への対抗なのだそうです。

  「わが「食学」考」は灰谷健次郎のエッセイ。食学の大切さを訴えています。自由の森学園では、食学を一応はやっている感じだけどなぁ・・・ でも、カップめんばかり食べている自森生も多いです。理論があっても実践ができていないなぁ。

  5章の沖縄・渡嘉敷島へも灰谷健次郎のエッセイ。淡路島の自然が企業によってどんどん破壊されていくことに対して、灰谷健次郎は怒ります。しかしかし止められず、見るに耐えない。だから美しい沖縄の渡嘉敷島へ移る、と書いてあります。
  しかし、今では・・・ 渡嘉敷島の自然も昔より悪くなった、と渡嘉敷の人たちは言います。オニヒトデによって、サンゴは食いあらされ、世界一美しいといわれた海が壊されていく。

  僕は去年、渡嘉敷に行ってその海に入ってきたけど、とても綺麗だと感じました。昔は、あれよりももっと美しかったのか・・・ どれだけきれいだったんだろう。想像できないほど凄かったのかなぁ・・・


自森人読書 遅れてきたランナー
★★★

著者:  土橋正
出版社: 技術評論社

  『やっぱり欲しい文房具~ステイショナリー評論家がえらんだ普段使いの傑作たち~』は、著者がこよなく愛する文房具についての本。いろんな良い文房具が紹介されています。こだわろうと思えば、鉛筆にだってこだわることが可能なのか・・・ 感心してしまいます。

   鉛筆なんてこだわるべきものなのかなぁ、と僕は思いました。多分、使い慣れた物が1番使いやすいものじゃないか、と思うんだけど。僕は、いま使っている鉛筆が1番良い感じだなぁ、と思います。

  便利なメモ帳やペンなども紹介されていて、面白いです。ただし全部高い。う~ん、こだわりを持つにはどうしてもお金が必要なのかなぁ。安い物ではないとだめ、というこだわりも有り得るから、別にお金は必要ないのか。そもそも、「こだわり」っていうのは何なんだろうなぁ・・ あれ、自分で何を書いているかよく分からなくなってきました・・・

  読む分には面白いけど、面白いからといって買おうとはあまり思わないなぁ。1万円の違いによって何か(想像力とか、そういう何か)が発揮できるようになるわけじゃないし。ただ、読んで「へぇ宇宙でも使えるボールペンっていうのがあるんだ」と知ることができるのは楽しいです。

  損はしないと思います。


自森人読書 やっぱり欲しい文房具~ステイショナリー評論家がえらんだ普段使いの傑作たち~
★★★★

著者:  アーサー・ビナード
出版社: 朝日新聞社

  『日々の非常口』はアーサー・ビナードのエッセイ集。細々としたことばのはなしから、政治のはなしまでいろんなものが含まれています。とても面白いのもあれば、ありゃそれほど面白くないなというのもありました。だけど、けっこう面白いものが詰まっています。

  僕が気に入ったのは、憲法9条がらみの昔話についてのはなしでした。タイトルは『鐘を守るためには』。

  かつてのデンマークの昔話。戦争がやってくると聞いた村人達は戦争に備えなきゃ、ということで大事なものを片っ端から隠していきました。そのうちに、村人たちは「鐘も大事だ」ということに気付きます。でも隠す場所が無い。すると誰かが「海の中に隠したらどう?」というと、みんなグッドアイディアだと賛成。

  海に鐘を落としてしまいました。でもそれだと、どこに落としたか分からないのでは・・・? 「いやいや船の横っ腹に×印をつけたから大丈夫!」というはなしなんだけど。最後の締めは。

  改憲を主張する側は「戦争放棄を堅持しつつ、武力行使を抑止的かつ最小限に」などと口約束はするだろうが、そんなものはドッボーンのあとの、船の横っ腹の×印にすぎない。

  そう結びつくのか、と感心しました。

  下は、そのエッセイのタイトル全部。

  『東西東西』『ネーミングを汲み取る』『落ち葉拾い』『クレオパトラのサラダ』『生まれ順』『バンブーショック』『一番食?』『夢のバットハウス』『ダーウィンと大統領』『機内食』『猫への手紙』『なに南蛮?』『ザリガニの目』『ゲッキョク株式会社』『歩き喋り器』『ミスプリの命』『テケテケ出ずる国』『大まかな好き嫌い』『夏の線引き』『豚の耳学問』『あれ鈴虫も』『ハローとアーソー』『店の「変わる顔」』『湯の効能』『捨てる神、拾う銭』『二兎物語』『優雅な無知』『落とし物はつらいよ』『空飛ぶ一票』『雷の内訳』『民主化野郎!』『村の夕暮れ』『馬に履き物、蟹に被り物』『寿司シャトル』『足もとを見る』『御用流行語?』『残雪に思う』『もういくつ刈ると』『鐘を守るためには』『横着メロ』『鼠や蚕』『豆を撒かれたサンタ』『剣を鍬に、銃を薪に』『ぼけの始まり』『アザラシ見』『言葉の万能度』『貝の音』『在留期限』『セールラット』『巨体満足?』『ジョージのおかげ』『殺虫罪』『夜の自由時間』『もったいない話』『ベンチの記憶』『ツバメの戒め』『見え隠れ』『アリのまま』『経済の音』『平均の不平』『不安運転』『ことばと子どもとこだま』『郵便の歌が危うい』『春は曙、夏はイナゴ』『奇妙な現実』『産婆になりましょう』『コーヒーの種』『ぼくらも仲間?』『一筆啓上仕り候』『左前の羽衣』『どっちもどっち世論』『刑務所産業の果実』『あれは水車の回る音?』『日米捏造国自慢』『きぬずれ、ベロずれ』『ゲルと馬』『金庫の中』『風呂のクジラ』『ツルツル論』『水まわり』『いろはいろいろ』『チラシの自由』『通じない悪態』『小切手の利点』『数取りの妙』『カレンダーの展望』『顔つなぎ』『七面どうな話』『尊い偽善』『盗聴ゲーム』『いちばんおっかねえ』『顔文字の隠れみの』『言葉の鏡』『何がワニか』『線を引く』『謝罪の過ち』『六千万頭の我が家』『水を乞う』


自森人読書 日々の非常口
★★★★

著者:  井上ひさし
出版社: 文藝春秋

  本というものは、めぐりめぐっていろんなところへたどり着く・・・ 井上ひさし『本の運命』は井上ひさしの本との関わりを書いたものです。ちょっとエッセイぽいけど、エッセイではないかな。最初の戦争の頃のはなしというのは面白かったです。子どもの頃は、野球選手や、映画監督になりたかったというのを読んで、子どもは誰でもそういう仕事に憧れるものなんだなぁ、と納得しました。でも紆余曲折あり、井上ひさしさんは結局本を書く仕事・および戯曲を書く仕事についたそうです。

  昔、戦後はほんとうに本がなかった、という部分がとても引っかかりました(あっても落書きだらけだったりしたそうです・・・)。今では図書館に行けば、たくさんあるんだけど。それは幸せなんだなぁ。もっと感謝しなければいけないのかも知れない。今は、日本に戦争がないからこそ、呑気に、またはまじめに読書することが許されるんだなぁ。

  井上流の、本の読み方十箇条というのが面白かったです。専門書などを読むときは、「目次を睨むべし」なのだそうです。そうか、それで最初に把握しておくのか・・・ これからやってみようと思いました。あと、しおりは1本じゃなくてたくさんあった方がいい、というのもうなずきました。気になるところにはとにかく線を引こう、というのもよく分かります。でも、僕は図書館でたくさん本を借りているから、あまり実践はできないなぁ。

  「子どもを本好きにするには」という章がありました。そこに、子どもに読書感想文を書かせるのはやめるべきだ、というのがあったのですが、それはまさにそのとおりだ、と思いました。結局、学校の宿題という形だと、正直な思いではなくて、大人の望む常識的な文章を書かざるを得ません。いやになるに決まっているよなぁ。

  『本の運命』とても面白かったです。井上ひさしの本への愛が伝わってくるなぁ・・・


自森人読書 本の運命
★★★★

著者:  乙武洋匡
出版社: 講談社

  生まれつき両腕両脚がない(先天性四肢切断というらしい)乙武洋匡さんの自伝です。僕は、この本を小学生の頃に読みました。その時、まず表紙を見て、少し驚いたような気がします。「手も足もない人が車椅子に乗って道路をすすみながら、こちらに向かって笑いかけている」という、けっこうインパクトのある表紙だったからです。

  僕はほとんど全ての本を図書館で借りています。でも、『五体不満足』は珍しく家に買って置いてあった本でした。ものすごく売れた本だそうです。日本の歴代ベストセラートップ3に入るくらいだ、と誰かから聞きました。いろんな批判も受けてるみたいです。「障害者であることを売りにしている」とか、「周囲の環境(理解者・お金とか)に恵まれているからそんなことを言えるんだ」とか。

  確かにそういった批判もあながちはずれじゃないかも知れません。それでもやっぱり乙武洋匡さんという人は凄いなぁ、と感じました。両手両足がなくて、人生に絶望せずに生きていく、というのはけっこう難しいことだと思います。それを乗り越えたということにびっくりします。安易に批判するのは、どうかと思うんだけどなぁ。

  まぁうちにもあったくらいなので、みんな読んでいる本だと思います。


自森人読書 五体不満足
★★★★

著者:  長倉洋海
出版社: バジリコ

  戦場を撮るカメラマン、長倉洋海。彼が、たぶん僕くらいの高校生に向けて書いてくれた本です。自分の道というものは、誰も教えてくれない。自分自身の眼で世界を見て、自分自身の手で地図を描かかないと。そう教えてくれます。そんなに押し付けがましくなく。

  長倉洋海は、アフガニスタンやコソボ、エル・サルバドルに行っています。そして幾多の戦場の写真を撮ってきました。けれども戦争を撮るというより、現地に生きる人たちの姿を撮っているそうです。殺し合いの隣で生きている人たちはたくさんいます。そして殺しあっている人たちにだって生活があります。

  アフガニスタンの英雄アフマド・シャー・マスードとも友達だったそうです。彼はタリバーンに対抗する勢力・北部同盟の副大統領、軍総司令官、国防相でした。けれども、長倉洋海はそういった面ではなくて、マスードの人間としての一面を撮ろうとしています。テレビや新聞では報じられない部分です。とても凄いな、と感じました。

  なぜかあまり報道されませんが、アフガニスタンではいまでも自爆テロが相次ぎ、混乱が続いています。でももしも彼が生きていたら、ここまで血みどろの事態に陥ることはなかっただろうといわれます。アフマド・シャー・マスードは、アメリカ同時多発テロ事件の2日前に暗殺されました。

  テレビや新聞を読んだだけで分かったつもりになるのは確かに危険です。自分で疑って、自分で考える、そういう大切なことをもう1度振り返らせてくれるいい本です。少し文章が読みづらい気がしました。でも、それを補ってあまりある内容があります。


自森人読書 ぼくが見てきた戦争と平和
★★★

著者:  北原菜里子
出版社: 岩波書店

  マンガ家という職業。みんな1度は憧れるものかも知れません。絵がそれほど上手ではない(これは控えめな表現・・・)僕はあまり憧れはしていませんでしたが・・・ マンガ家になるためには、まずどうしたらいいのだろうか? いったいどのくらいの仕事をやってけるのか? やっていく中で大切なことって何? いろんな質問に答えてくれます。

  マンガ家楽しそうだけど、その一方でものすごく大変だろうなぁ、と思います。だってあれだけの分量の絵を描かないといけないのです。ぼくは同じ絵の描けないので、とても尊敬します。ホテルとかに閉じこもってやる、とかそういうはなしを昔のマンガ家の人はみんなしていたような気がします。今はどうだか知らないけど。それにマンガ家といったってみんな違うだろうから。千差万別というか。個人個人によってかなり違うような気がします。

  『少女マンガ家ぐらし』は、マンガ家の生活なんかが分かる楽しい1冊です。


自森人読書 少女マンガ家ぐらし
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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