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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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著者:  モリエール
出版社: 新潮社

  アルセストは潔癖を好む青年でした。彼は嘘とお世辞と阿諛追従ばかりが満ちている社交界を憎み、妥協しませんでした。詩が下手な友人には詩が下手だと言い、決して自分の意見をまげなかったわけです。しかし、美しい未亡人セリメーヌに恋してしまいます。彼女は誰に対しても笑顔を浮かべ、親しくする浮気性な女性でした。友人フィラントの忠告を受け入れないアルセストは、自分の力でセリメーヌを変えてみせると豪語するのですが・・・

  フランスの古典劇。戯曲。

  あっさりとしているのだけど、深いです。初演は1666年だそうですが、現代の人間が読んでも理解できるし、共感できるのではないか、と感じます。

  アルセストは嘘とお世辞を言わず、剛直に生きていこうとしたために追い詰められ、恋に破れ、傷付いていきます。直情を貫こうとすれば人間社会では生きていくことが出来ず、かといって社会に適応しようとすれば自分を偽ることになるわけです。その問題で悩んでいる人も多いのではないか。まぁ青臭い悩みということもできるけど、切実な問題だと思えます。

  それに比べて、セリメーヌという女性のように奔放に生きていくことは、かえって随分と楽かも知れないと感じられます。だって、自分というものに一貫性がなくても構わない、というふうに思いながら、感覚的に生きていくわけです。今はあなたが傍にいるからあなたが好きだけど、あの人と会っているときはあの人が好き、というふうにくるくる変わるならば、どれだけ便利か。

  けど、彼女のように生きたいとは思いません。アルセストにようにもセリメーヌのようにも生きたくないとするならば、フィラントのように生きるしかないわけですが、彼のように良識を身につければ誰とでも付き合えるのかも知れないけど、様々な矛盾を自分のうちに受け入れることはなかなかに難しいといえます。やはり、中庸/ほどほどというのが一番難しいのではないか。

  でも、それを身につけることこそが大人になる、ということなのかも知れません。『人間ぎらい』は随分と面白いです。様々なことを考えさせてくれます。


自森人読書 人間ぎらい
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