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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  松下竜一
出版社: 講談社

  『潮風の町』の著者である松下竜一は、もともと豆腐屋だった人です。句集『豆腐屋の四季』を自家出版したらヒットし、作家になりました。信念を持って世の中と対峙した気骨ある人を取り上げたノンフィクションをたくさん書いています。

  隔離されたハンセン病患者の詩人・伊藤保の評伝『檜の山のうたびと』、下筌ダム反対運動を書いた『砦に拠る』や、関東大震災の時、陸軍憲兵隊に殺された大杉栄と伊藤野枝を取り上げた『ルイズ 父に貰いし名は』、アナキスト大杉栄を影で支えた和田久太郎を取り上げた『久さん伝 あるアナキストの生涯』、天皇暗殺すら目論んだテロリスト集団・東アジア反日武装戦線を取り上げた『狼煙を見よ』などなど。

  ダム建設という問題に取り組んだ松下竜一は、環境問題にも目を向けます。彼は、「環境権」を世間に広めた人物でもあります。と、ここらへんで作家の紹介は終えて、『潮風の町』の感想へ。

  『潮風の町』は、豆腐屋をやめたあと小説家としてやっていけるのだろうかと悩み、さらに病気に苦しみながらも、妻や息子との日々の生活の中で、ささやかな幸せを見つながら生きていく松下竜一のエッセイです。こういう感傷的、とすらいえるような文章を書く人だったんだなぁ・・・  ちっぽけで弱い1人の人間としての松下竜一が書かれていて、とても興味深いです。

  病院に入院している間は退屈なので、渡したときの息子たちが喜ぶ姿を思い描きながら、いらなくなった絵本のキャラクターを切り抜いてみたり。お遊びということでトランシーバーで妻や息子と、「隊員ごっこ」をやったりしてみたり。
  <もしもし、おとうさん、ぼくけんちゃん、おとうさんどうぞ>/<もしもしこちら隊長ドラゴンだ。今日から健ちゃんをケン隊員に任命する。・・・こちら隊長ドラゴン、ケン隊員応答せよ><はい、おとうさん、ぼくケンたいいんです>というような感じで、とても楽しそうです。

  しかし、松下竜一は子どもの頃からとにかく体が弱い人です(幼児の頃、高熱で右目を失明)。病院に入院するというのはよほど悪いのです。それでも、家族とのつながりのなかに喜びを見つけて、生き抜いていくんだなぁ。もしかしたら、苦しみの中にいるからこそ、逆に楽しみが際立つのかも知れない、と思いました。


自森人読書 潮風の町
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