自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
★★★★★
著者: 米澤穂信
出版社: 東京創元社
1999年4月。日本の普通の高校生・守屋路行と太刀洗万智が、雨宿りをしていた異国の少女、マーヤと出会ったところから物語は始まります。マーヤはユーゴスラヴィア人、一時的に日本に来ているのだそうです。彼女はいろんな国の文化を学んだあと国へ帰り、「ユーゴスラヴィア」という国をつくることを目指していました。守屋路行は、マーヤが「つまらない日常」から連れ出してくれる存在なのではないか、と感じて憧れます。そうして日本の高校生である守屋路行、太刀洗万智、白河いずる、文原竹彦らは、マーヤと過ごす日々をそれなりに楽しんでいました。
ですが、別れはやってきます。マーヤの帰国直前に、彼女の祖国で動乱が発生。しかしそれでも、彼女は大丈夫だと帰っていきます。そして・・・
「哲学的理由がありますか?」というマーヤの問いがどうしても印象に残ります。ちょうどユーゴスラヴィア解体の頃の物語。
米澤穂信を一躍有名にした出世作、らしいです。確かにとても面白い。米澤穂信の作品中、今のところ多分1番好きな小説です。
「ミステリ・フロンティア」からでているのに、ミステリ小説としてたいして面白いとも言えないという意見もあるようです。確かにそういう批判も一理あるかも知れない。僕も、中盤まではでてくる「謎」がどれも小さくてあまり面白くないなぁと感じ、読み進めるのが億劫になっていました。だけど、最後のページまでたどり着いてみたら、がらりと印象が変わりました。
『さよなら妖精』は、分類としては多分青春小説になる気がします。「マーヤは、自分を広い世界へ連れて行ってくれるのだ」と思っていたのは、単なる甘えに過ぎなかったと主人公・守屋は終わり頃に気付くんだけど・・・ そこにいたって、やっとそれに気付くというところが痛々しい。
ほんとは、日本の友達や、そしてマーヤとともに過ごした何気ない日常の日々こそが素晴らしいものだったのに、渦中にあってはそれに気付けない・・・ 通り過ぎてしまったあとに、初めて分かる。そういう「青春」の姿みたいなものを、『さよなら妖精』は、見事に書ききっています。それだから、★5つ。
自森人読書 さよなら妖精
著者: 米澤穂信
出版社: 東京創元社
1999年4月。日本の普通の高校生・守屋路行と太刀洗万智が、雨宿りをしていた異国の少女、マーヤと出会ったところから物語は始まります。マーヤはユーゴスラヴィア人、一時的に日本に来ているのだそうです。彼女はいろんな国の文化を学んだあと国へ帰り、「ユーゴスラヴィア」という国をつくることを目指していました。守屋路行は、マーヤが「つまらない日常」から連れ出してくれる存在なのではないか、と感じて憧れます。そうして日本の高校生である守屋路行、太刀洗万智、白河いずる、文原竹彦らは、マーヤと過ごす日々をそれなりに楽しんでいました。
ですが、別れはやってきます。マーヤの帰国直前に、彼女の祖国で動乱が発生。しかしそれでも、彼女は大丈夫だと帰っていきます。そして・・・
「哲学的理由がありますか?」というマーヤの問いがどうしても印象に残ります。ちょうどユーゴスラヴィア解体の頃の物語。
米澤穂信を一躍有名にした出世作、らしいです。確かにとても面白い。米澤穂信の作品中、今のところ多分1番好きな小説です。
「ミステリ・フロンティア」からでているのに、ミステリ小説としてたいして面白いとも言えないという意見もあるようです。確かにそういう批判も一理あるかも知れない。僕も、中盤まではでてくる「謎」がどれも小さくてあまり面白くないなぁと感じ、読み進めるのが億劫になっていました。だけど、最後のページまでたどり着いてみたら、がらりと印象が変わりました。
『さよなら妖精』は、分類としては多分青春小説になる気がします。「マーヤは、自分を広い世界へ連れて行ってくれるのだ」と思っていたのは、単なる甘えに過ぎなかったと主人公・守屋は終わり頃に気付くんだけど・・・ そこにいたって、やっとそれに気付くというところが痛々しい。
ほんとは、日本の友達や、そしてマーヤとともに過ごした何気ない日常の日々こそが素晴らしいものだったのに、渦中にあってはそれに気付けない・・・ 通り過ぎてしまったあとに、初めて分かる。そういう「青春」の姿みたいなものを、『さよなら妖精』は、見事に書ききっています。それだから、★5つ。
自森人読書 さよなら妖精
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