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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  星新一
出版社: 新潮社

  ショートショートという一分野を切り開いた大作家、星新一の本を初めて読みました。彼がいなければ、ショートショートという分野は成り立たなかったといわれるし、彼が去った後、ショートショートの分野は退嬰気味らしいです。ほんとに凄いSF作家なんだなぁ・・・

  『なりそこない王子』は、『死体ばんざい』『ものぐさ太郎』『合法』『なりそこない王子』『エスカレーション』『ミドンさん』『魅惑の城』『善良な市民同盟』『新しい政策』『そして、だれも……』『収容』『流行の鞄』の12編を収録。

  星新一の文章を読むと、難しい言葉と簡単な言葉が並んでいて、どこかちぐはぐな印象を受けることもあります。昔と、今とで言葉のニュアンスがかわってしまったのかもなぁ。とはいえ、玉石混交みたいなショートショートの山の中にはキラリと光る物語が潜んでいたりして、読んでいると楽しいです。

  説明がはちゃめちゃで、その登場人物がどうしてそういう方向に思考をすすめていくのか、納得できない部分があります。だけどそこも含めて面白い。星新一って「乾いた」文章だから面白みとかをだすのが難しそうなのに、良い意味でどこか「滑稽」なんだよなぁ。そこに、意外なラストが加わったりするからもっと面白くなる。

  よくこの短さでこれだけの物語を展開させるなぁ、ととにかく感心します。とくに、『そして、だれも・・・・・・・』とか凄い! と思いました。ただし、僕は、短編よりも長編の方が好きなので、この短さにどうしても味気なさを感じてしまいます。それぞれもっともっと展開させていけるだろうに。物語の種みたいなものが、もうごろごろしています。いや、そこをあえてショートショートでまとめるところが星新一の潔さであり、みごとさなのか。


自森人読書 なりそこない王子
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