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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  コーマック・マッカーシー
出版社: 扶桑社

  ヴェトナム帰還兵のモスは、メキシコ国境近くで、蜂の巣状態にされた車と殺された人間を見つけます。どうやら麻薬密売人どうしの銃撃戦があったらしいのです。そこには大金が残されていました。モスは金を持って逃げ出しますが、息のあった男に水をあげようとして殺人者シュガーに目をつけられてしまいます。シュガーが現れた場所には血が撒き散らされ、何十人もの人が死にます。老保安官ベルはそれを止めようとするのですが・・・

  強烈なノワール/暗黒小説。

  コーマック・マッカーシーは1933年生まれのアメリカの小説家だそうですが(『血と暴力の国』は2005年発表)、細部を徹底的に描写するところなどは非常に先鋭的。括弧(「」)がなく、地の文と台詞が混じっているので少し読みづらいのですが、味があります。

  読んでいると暗い気持ちになります。ここまで不気味で、救いのない物語も珍しいのではないか。ヴェトナム戦争が背景にあるらしいとは感じられるのですが、誰もそれによってもたらされたひずみ/惨禍から逃れられません。

  血に塗れた国家アメリカの現実を描き出した作品なのではないか、と僕は感じました。

  神を信じず、自分の論理にだけ従って幾らでも人を殺していく不気味な殺し屋シュガーが物凄く印象的です。それと対照的なのは老保安官ベル。彼は古きよき時代を想い、つらつらと悩み続けます。しかしどれだけ考え、悩み、苦しみ、動いたとしても彼にはどうしようもありません。

  なぜならば、多分、シュガーという存在自体がアメリカ社会に根ざしたものだからです。シュガーは銃を振り回し、血を撒き散らし、人を殺し続け、決して倒れません。あまりにも非人間的。まるで戦争に適応した怪物としか思えません。ですが、それこそがアメリカなのではないか?

  人間性とは何なのか、良い社会とは何か考えさせられます。


自森人読書 血と暴力の国
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