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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  マイク・レズニック
出版社: 早川書房

  アフリカのキリンヤガ周辺に住んでいた少数部族キクユ族は西洋文化が侵入してきたため滅びかけます。ですが、伝統を大切にする人たちは古くからの生活を守り続けるため、政策の一環としてキリンヤガという惑星に移住します。惑星を仕切るのはイェールとケンブリッジを出た祈祷師・コリバ。彼は、キリンヤガを守るために奮闘するのですが、矛盾は拡大していき・・・

  寓話的なSF小説。

  オムニバス長篇。『プロローグ もうしぶんのない朝を、ジャッカルとともに』『1 キリンヤガ』(ヒューゴー賞受賞)『2 空にふれた少女』『3 ブワナ』『4 マナモウキ』『5 ドライ・リバーの歌』『6 ローストと槍』『7 ささやかな知識』『8 古き神々の死すとき』(ローカス賞受賞)『エピローグ ノドの地』収録。

  テーマはかなりはっきりしています。アフリカとその地に生きる人々の悲劇を扱った作品。西洋人による文化的・軍事的侵略の結果、何が引き起こされたのか考えさせられます。

  コリバは白人の中で育ちながら、その社会の矛盾に苦しめられます。そして、自分がキクユ族ではなく黒いヨーロッパ人になっていくことに納得できず、西洋文化に背を向け、家族さえ捨て、キリンヤガにキクユ族のユートピアを復活させようとします。彼は首尾一貫しています。例外は決して認めず、伝統を頑固に守ります。老いた者や逆子はジャッカルに食わせてしまうのです。

  コリバが寓話を大切にするところは印象的。彼は物語によって人々の心を捉えようとします。彼の説教臭い部分が好きになれない人もいるかも知れないけど、僕は頑固でいいなぁと感じます。

  ですが、最終的にキリンヤガは破綻します。やはり近代的な文化(合理主義・時間を短縮する便利な機械)には敵わなかったのです。そもそもキリンヤガという惑星を、西洋人と彼らの持っている科学によって用意してもらったこと自体が矛盾ともいえるし、西洋文化を身につけ、それでもってキクユ人の世界キリンヤガに大きな影響力を及ぼすコリバ自身が矛盾した存在ともいえます。そのような矛盾を抱えたまま、無事に社会が続いていけるとは思えません。

  ですが、コリバの気持ちはよく分かります。近代化が世界にもたらした害悪は決して小さなものではありません。それらと対峙しようとするところには共感します。

  ラストはあまりにも哀しすぎます。夢破れ、象とともに去りゆくコリバはどこへいく・・・


自森人読書 キリンヤガ
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