自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
★★★★
著者: 笙野頼子
出版社: 講談社
『極楽 笙野頼子・初期作品集1』は笙野頼子の短編集。『極楽』『大祭』『皇帝』収録。
『極楽』
主人公は檜皮という男。彼は子供の頃から無邪気ではなく、無自覚で鈍感だったため周囲から忌み嫌われ、家族からも抑圧を受けます。彼は尻のような顔をした女と結婚し、娘を持つのですがほとんど意識もしません。そして自宅に引きこもり、観念的な憎悪を描きたいと願い、様々な地獄絵を参考にし、下絵を描き続けるのですが・・・ 著者のデビュー作。
『大祭』
主人公は、七歳の少年。彼は、五十年に一度巡ってくる街の大祭を待ち焦がれていました。大祭がくれば何かが変わるような気がしていたからです。しかし・・・
『皇帝』
主人公は、私であることを拒否し、皇帝を名乗る男。彼は声に張り合い、ほとんど錯乱しかけながらも皇帝であり続けるため、呪文を唱え、塔を想像しているのですが、過去の記憶が蘇り。小説としては破綻しているような気もするし、だれるけど凄いです。すっきりとはしていないけど、近代的自我や、唯物論や、管理社会や家族のことを、真正面から扱おうとしてるのがよく分かります。初長篇。
ここまで陰鬱で、薄暗くて重たくて読むのが辛い小説と言うのも、最近では珍しいのではないか、と思います。読もうとしても突き放されるのです。『極楽』はまだちょっとしたブラックユーモアが感じられますが、『大祭』の鎮痛でグロテスクな読み応えにはいらいらさせられます。そして『皇帝』はまどろっこしいのに、破壊的。
笙野頼子は、近代社会というものの構造と、それを成り立たせるために存在している醜悪で抑圧的な力のありかのようなものを全力で暴こうとしているようです。けど、まだ道筋がついていないような印象も受けます。とはいえ、非常に挑戦的。
「私」のことを書くためにゆがんだ社会を描いているので、「私」が使われていたとしても全然私小説ではなくて、反私小説ともいえるのではないか。なので、やっぱり笙野頼子という小説家は、文学史的にも重要といえるのではないかなぁ、と僕は感じるのですが。
自森人読書 極楽 笙野頼子・初期作品集1
著者: 笙野頼子
出版社: 講談社
『極楽 笙野頼子・初期作品集1』は笙野頼子の短編集。『極楽』『大祭』『皇帝』収録。
『極楽』
主人公は檜皮という男。彼は子供の頃から無邪気ではなく、無自覚で鈍感だったため周囲から忌み嫌われ、家族からも抑圧を受けます。彼は尻のような顔をした女と結婚し、娘を持つのですがほとんど意識もしません。そして自宅に引きこもり、観念的な憎悪を描きたいと願い、様々な地獄絵を参考にし、下絵を描き続けるのですが・・・ 著者のデビュー作。
『大祭』
主人公は、七歳の少年。彼は、五十年に一度巡ってくる街の大祭を待ち焦がれていました。大祭がくれば何かが変わるような気がしていたからです。しかし・・・
『皇帝』
主人公は、私であることを拒否し、皇帝を名乗る男。彼は声に張り合い、ほとんど錯乱しかけながらも皇帝であり続けるため、呪文を唱え、塔を想像しているのですが、過去の記憶が蘇り。小説としては破綻しているような気もするし、だれるけど凄いです。すっきりとはしていないけど、近代的自我や、唯物論や、管理社会や家族のことを、真正面から扱おうとしてるのがよく分かります。初長篇。
ここまで陰鬱で、薄暗くて重たくて読むのが辛い小説と言うのも、最近では珍しいのではないか、と思います。読もうとしても突き放されるのです。『極楽』はまだちょっとしたブラックユーモアが感じられますが、『大祭』の鎮痛でグロテスクな読み応えにはいらいらさせられます。そして『皇帝』はまどろっこしいのに、破壊的。
笙野頼子は、近代社会というものの構造と、それを成り立たせるために存在している醜悪で抑圧的な力のありかのようなものを全力で暴こうとしているようです。けど、まだ道筋がついていないような印象も受けます。とはいえ、非常に挑戦的。
「私」のことを書くためにゆがんだ社会を描いているので、「私」が使われていたとしても全然私小説ではなくて、反私小説ともいえるのではないか。なので、やっぱり笙野頼子という小説家は、文学史的にも重要といえるのではないかなぁ、と僕は感じるのですが。
自森人読書 極楽 笙野頼子・初期作品集1
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