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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★

著者:  トレヴェニアン
出版社: 角川書店

  モントリオールの一角に、ザ・メインという薄汚れた街がありました。ザ・メインは、イギリス地区とフランス地区の狭間に位置しており、元兵士や娼婦、ギャングの端くれ、老人など、様々な人間が溢れかえる吹き溜まりのような場所でした。ですが、それでも一定の秩序がありました。ラポワント警部補がいたからです。彼は三十年にもわたって毎日欠かさず街をパトロールし続けています。彼こそがザ・メインの法であり、運命なのです。そんなある日のこと、跪くようにして死んでいる男が発見されます。ラポワント警部補は、若い警官ガットマンとともに、その事件を追うのですが・・・

  物悲しい犯罪小説。

  不条理な世界に放り込まれ、猥雑な街の中で這いつくばりながら生きていく人たちが抱く悲哀のようなものが淡々と描き出されています。

  とくに、清濁併せ呑む主人公クロード・ラポワントの姿が印象的。彼は毎日ザ・メインの治安を守るため街を歩きまわり、糞のような連中を脅し、叩きのめし、殴り、すかし、貶めます。ですが、そういう行為が非難され、警察組織の中では孤立しています。その上、胸の中には動脈瘤が存在しているため明日も分からず、今では毎日のように若い頃喪った亡き妻と存在しない娘のことを妄想しつつ週に二晩友人とトランプで遊ぶことを楽しみにしているのです。

  「進歩的」な考え方を持つ若い警官ガットマンは、ラポワントのことを全面的には賛同できないけれど、立派な人だというふうに評します。その意見には共感しました。

  サ・メインという街そのものを描いた小説としても読めるのではないか、と感じます。

  ラストがあまりにも悲しすぎて堪らないです。地味な印象を受けるけど、しっかりと噛みしめたくなるしっかりとした小説。


自森人読書 夢果つる街
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