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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  笙野頼子
出版社: 講談社

  『タイムスリップ・コンビナート』は笙野頼子の短編集。『タイムスリップ・コンビナート』『下落合の向こう』『シビレル夢ノ水』収録。

  『タイムスリップ・コンビナート』
  去年の夏頃の話。マグロ恋愛する夢を見て悩んでいたら、いきなり電話がかかわってきて、どこかへいけ、と言われます。そして話している内に海芝浦へ行くことになるのですが・・・ 芥川賞受賞作。

  『下落合の向こう』
  電車に乗っていないとき、私は考えています。電車に乗っている間中私たちの時間は盗まれているのと。そればかりか知覚は捻じ曲げられ、ありもしない幻想を見せられていると。夢とも現実ともつかない電車の中での体験。

  『シビレル夢ノ水』
  家の中に入ってきた猫を拾ったのに実は飼い主がいたと発覚し、その猫を返した途端に精神が変なことになってしまいます。そして蚤が巨大化を始め・・・ グロテスクで、一番印象的。

  現代における現実や私とは何なのか考えさせられます。

  笙野頼子の小説は奇妙です。時には現実的な話の時もあるけど、基本的にはグロテスクな悪夢のようだし、おとぎ話のようです。奇想が詰め込まれてるのです。とはいえ、それは決して童話のように濾過されたものではないため綺麗ではないし、純粋でもありません。むしろ様々な物が詰め込まれ、接合されています。非常に気持ち悪いです。だけど、その感覚が堪らなく面白い。

  迷走し、浮遊しつつ、ここまで私や今というものについて、必死で考えようとしている文章はないような気もします。


自森人読書 タイムスリップ・コンビナート
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