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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  山本弘
出版社: 角川書店

  近未来、地球はアンドロイドによって支配されていました。そんな中、ロボットを襲って食料を奪っていた「語り部」の青年は、美人のアンドロイドと闘って敗れ、捕まってしまいます。彼は殺されるのかと脅えるのですが、アンドロイド・アイビスは物語を語り始めました・・・・・ 『宇宙をぼくの手の上に』『ときめきの仮想空間』『ミラーガール』『ブラックホール・ダイバー』『正義が正義である世界』『詩音が来た日』『アイの物語』といった短編の間に、青年とアイビスの会話(インターミッション)が挟まっています。

  物語に関するSF小説。

  豪華です。しかし、そのわりにはソフトな読み心地。アイとは何であるのか、というその一点がこの物語の肝。たくさんの意味が込められています。

  アイビスの語る物語はどれも綺麗なはなしばかり。しかし、アイビス(そして作者である山本弘)は、その綺麗過ぎということを逆手にとります。「現実よりも素晴らしいフィクションのどこがいけないのか?」と問いかけてくるのです。美しい物語にこそ真実は宿っている、物語には共感を創る力がある、というその主張には共感します。

  心の中につくった仮想空間に閉じこもってしまう人間の心の作用を、アイビス達アンドロイドはゲドシールドと呼びます。そして、彼女は人間を憐れみ、そしてその誤りを静かに指摘します。作者山本弘も同じ考えなのだろうと思います。彼は「と学会」の会長です。真実を拒絶し、トンデモないことを言い続ける人たち(ゲームをしすぎるとバカになるとか、アポロ11号の月面着陸はウソだったとか、超古代文明は存在したとか)の本をたくさん読み、紹介してきた人です。彼の言葉だからこそ説得力があります。

  とにかく強いメッセージ性を持った小説。僕は強く共感しました。「人間はみな痴呆症」「連綿と続いていく記憶だけが世界を断絶から救う」というアンドロイドの言葉は感動的。そして、ただ許容して欲しい、というアンドロイドの言葉が素晴らしすぎる、気がします・・・


自森人読書 アイの物語
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