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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  大原まり子
出版社: 早川書房

  『ハイブリッドチャイルド』は、大原まり子の中短編集。

  『ハイブリッド・チャイルド』
  サンプルBⅢ号は、人類が強大な機械帝国アディアプトロンに対抗するため作り出した戦闘用生体メカニック。肉と機械によって構成されていて原動力は核融合炉であり、不死を誇るため雑種(ハイブリッド)と呼ばれます。彼は人間の命令に絶対に従うはずだったのになぜか意思を持ち、脱走します。そして、人里離れた一軒家で、著名な女性作家とその娘ヨナに出会います。作家はほとんど発狂寸前、娘は虐待され続けて死んでしまったのに意外な形で蘇っていて・・・

  『告別のあいさつ』
  ヨナ(サンプルBⅢ号)は、孤独を好んで険しい山に住処を決めた老人のもとで過ごします。ですが、老人のもとを訪れた人に気付かれ、ヨナは背中から翼をはやし、飛び立ちます。

  『アクアプラネット』
  ママであるドラゴン・コスモスに庇護されつつ宇宙を漂っていたヨナは、白い棺の中に閉じ込められたシバという少年に出会います。2人は惹かれあい、惑星カリタスに降り立つのですが、その星を支配している人工知能ミラグロスがアディプロトンの攻撃を受け、「学習障害」を起こし、発狂。それを復元するために動き回っていたら、2人は離れ離れになってしまい・・・

  子と母を巡る壮大な物語、なのかなぁ。

  ヨナ(サンプルBⅢ号)の他に、もう一人主人公がいます。八百年の記憶を持ったまま老人の姿でこの世に生まれ落ちた神官です。彼は国の頂点にあって人類の全てを把握し、指揮します(サンプルBⅢ号をつくったのも彼)。ですが、年を経るごとに若返っていき、全ての記憶を失っていきます。そして迷いの中に陥っていきます。彼が何者なのか、どうなっていくのか、というのも非常に気になるのですが、じょじょに明かされていきます。

  予想ができず、ザクッと刈り込まれているのにぴったりくる文章。くらくらするほど様々な物がぶち込まれている物語世界。どこまでも広がっていくイメージ。壮大で寓話的/神話的な物語。いかにも大原まり子らしい作品。読んでいると酔いそうになります。

  決して文章が巧みというわけではありません。むしろ悪文として非難されそうな文体なのに、それが凄い効果を発揮しているのです。これこそ、本当の「物語」だと感じました。


自森人読書 ハイブリッド・チャイルド
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