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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  保坂和志
出版社: 中央公論新社

  僕は、妻に去られてしまい、5歳の息子クイちゃんとともに日々を過ごしています。クイちゃんは幼稚園にいきません。そして、毎日のように容貌魁偉な便利屋・松井さんとその妹美紗ちゃんが住んでいる家に出掛けていきます。そして、僕と美紗ちゃんとともに稲村ガ崎周辺を散歩します・・・

  毎度のことながら、保坂和志らしい理屈っぽい小説。

  時間や空間といった目では見えないものを書こうとしているのではないか、と感じました。しかし、「見えないものを書こうとしている」という大雑把なまとめ方をされることを拒否している小説のような気もしました。だから、扱いづらいのですが、非常に面白いことは確か。

  見えない物を扱っているのですが、決してスピリチュアルに走ることはありません。むしろ、主人公は非常に論理的、合理主義的な人間です。彼は真理があると思ってはいないし、世界を割り切ることは出来ない、と悟っています。

  主人公である僕は、息子に文字を教えようとしません。彼は、書くことよりも考えることの方が大切なのだというふうに考えているからです。それが非常に印象的でした。別に文字を使わなくても、論理性を手に入れることはできるのだろうか、と考えてしまいました。考えていたら、文字や言葉で掬い取れないものを掬い取ろうとしている小説のようにも感じました。

  保坂和志の小説には、いつもふらふらしている登場人物がいます。その人物が、重要なテーマのようなものを漏らします。今回はゲイ二階堂がその役。「・・・いかにして、いまここにいるあんたやおれを受け入れられるか・・・」というようなことを彼は喋ります。『季節の記憶』のキーワードは「いまここ」か。

  『よつばと!』のようだと感じます。子供に対して、どのように世界を説明していけばよいのか、と考える大人たちの姿が印象的でした。

  平林たい子賞、第33回谷崎潤一郎賞受賞作。


自森人読書 季節の記憶
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