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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  角田光代
出版社: 文藝春秋

  母親エリコは「何ごともつつみかくさず、タブーを作らず、できるだけ全てのことを分かち合おう」と家族に言います。しかし、実は誰もが心の奥底に秘密を抱え込んでいます。ノリで全てを凌いでいく軟弱な父タカシは、2人の愛人とつきあっています。抑圧的な祖母を嫌っていた母エリコは、祖母から逃れるために父とセックスして妊娠し、結婚したのですが、それを誰にも語れず、今でも祖母を愛せずにいます。恋人森崎と疎遠になった高校生のマナは学校で孤立してしまいます。地味な中学生のコウは友人がいなくて学校にも行けず、孤独を抱えています・・・

  郊外のダンチで暮らす京橋家の物語。

  6人の視点(姉・父・母・祖母(母の母)・父の愛人(にして弟の家庭教師)・弟)から京橋家が描かれています。

  綺麗な言葉が持っている、もわっとして掴みがたい気持ち悪さが描き出されているところがみごと。家族というものについて考えさせられました。どうして、ゆがんだ家庭は存続できるのだろう。誰もが仮面を被り、家族の一員として一定の役割を演じ続けるからか。しかし、必死の努力と演技によって保たれている幸福な家庭とは何なのか分からないです。

  そもそも、幸福な家庭などというものは存在しないのかも知れません。それでは、伝説と空想の中にしか存在しない「空中庭園」と同じではないか。

  しかし、何にしても家族はあった方が良い気もします。家族を結び付けているのは愛ではないのかも知れない、と感じました。消極的な選択の結果、というか。けど、やっぱり空想の中にしかないにしても、幸福な家族を目指したいよなぁ・・・

  キャラクターの書き分けが巧みだし、しかも構成が素晴らしいです。角田光代の小説はサクッとしていて読みやすいのに深いです。人間の心の暗部を抉り取っているからか。

  第3回婦人公論文芸賞受賞作。


自森人読書 空中庭園
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