自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
ビリー・ピルグリムという男の物語。彼はアメリカ軍の兵士でした。ドイツ兵に捕らえられます。そして、ドイツのドレスデンにあった使われていない屠殺場に連れていかれ、そこに収容されます。彼はドレスデンが程なくして大空襲によって月面のようになってしまうことを知っていました。なぜならば、トラルファマドール星人と出会い、彼らの哲学に触れていたからです。トラルファマドール星人は時間を超越しているのですが全てを変えられません。そして、「自由意志」などというものを真面目に論じているのは人間だけだと告げます・・・
奇怪な小説。副題は「少年十字軍」。
飛散したビリー・ピルグリムの記憶の欠片を拾い集めていくような感じです。時系列に沿っていません。なので、混乱しますが、ドレスデンで巻き起こった悲劇は、自分が壊れなければ受け入れることは出来ないものだったのかも知れません。
連合国軍が行った大空襲は、ドレスデンという都市とそこに生きる人たち10数万人を完全に焼き尽くします。しかし、その事態に遭遇した主人公は怒ることも嘆くこともありません。当然のこととして受け入れるだけです。彼は死すら甘受します。
何度となくくり返される、「そういうものだ」という言葉には呆れますが共感します。いかんともしがたい事態に直面したとき、人はそれを許容するしかないのではないか、と感じます。なぜなのか、と問うことは無意味だと感じることはしばしばあるのではないか。
人は世界を構造的に理解するために、人類はこれまで多くのことを学んできたはずなのに、その学びはたいてい活かされないし、むしろ悪用されている気がします。トラルファマドール星人のようにはなれない人間はどうすればいいのか。大量虐殺を理性的な言葉で語ることは出来ない、とヴォネガットは告げますが、だとしたら反省も困難です。
第二次世界大戦を経たあとに、人間性とかそういう言葉を持ち出して、真面目に生きるのは辛すぎるのかもしれない、と感じました。
読んだ本
カート・ヴォネガット『スローターハウス5』
読んでいる最中
コードウェイナー・スミス『鼠と竜のゲーム』
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