自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
モントリオールの一角に、ザ・メインという薄汚れた街がありました。ザ・メインは、イギリス地区とフランス地区の狭間に位置しており、元兵士や娼婦、ギャングの端くれ、老人など、様々な人間が溢れかえる吹き溜まりのような場所でした。ですが、それでも一定の秩序がありました。ラポワント警部補がいたからです。彼は三十年にもわたって毎日欠かさず街をパトロールし続けています。彼こそがザ・メインの法であり、運命なのです。そんなある日のこと、跪くようにして死んでいる男が発見されます。ラポワント警部補は、若い警官ガットマンとともに、その事件を追うのですが・・・
物悲しいミステリ小説。
猥雑な街に生きる人たちの悲哀のようなものが淡々と描き出されています。サ・メインという街そのものを描いた小説としても読めるのではないか。
清濁併せ呑む主人公クロード・ラポワントの姿が、あまりにも印象的。彼は毎日ザ・メインの治安を守るため街を歩きまわり、糞のような連中を脅し、叩きのめし、殴り、すかし、貶めます。ですが、そういう行為が非難され、警察組織の中では孤立しています。その上、胸の中には動脈瘤が存在し、明日も分からず、今では毎日のように若い頃喪った亡き妻と存在しない娘のことを妄想しつつ週に二晩友人とトランプで遊ぶことを楽しみにしているのです。いかにも父親的な人物です。
「進歩的」な考え方を持つ若い警官ガットマンは、ラポワントのことを全面的には賛同できないけれど、立派な人だというふうに評します。その意見には共感しました。
読んだ本
トレヴェニアン『夢果つる街』
読んでいる最中
カズオ・イシグロ『日の名残り』
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