自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
少年ミヒャエル・ベルクは、吐いてしまった時、十五歳年上の女性ハンナ・シュミッツに助けられます。その後、二人は愛し合うようになり、ベルクはハンナのために、トルストイの『戦争と平和』や、ホメロスの『オデュッセイア』を朗読しました。しかし、ハンナは突如として失踪してしまいます。その後彼女の影を追い続けていたベルクは、裁判を傍聴しているときにハンナを見かけます。彼女は戦争犯罪人だったのです・・・
ベストセラーになったドイツの小説。
最初の内は、性愛の物語のように思えます。だけど、実はナチスによるユダヤ人虐殺の問題を扱った重々しい小説です。
とはいえ、作品自体はテーマとは相反するほど軽いです(だからベストセラーになったのだろうと思います)。語り手が、戦争を経験していない若者だからかも知れません。しかも、ミステリ的な仕掛けもあります。ある言葉に二重の意味がこめられたりしているのです。なので結構読みやすいです。
とはいえ、テーマ自体は複雑。
かつての人たちが行ってしまった過ちを後世の人間が断罪できるか、傍観者に戦争責任はあるのか、と問うているようです。戦争犯罪人と裁かれるハンナは「そのとき、あなただったら、どうしましたか?」と裁判長に向かって問いかけます。
主人公ベルクは、ハンナと愛し合ったために、様々な疑問を抱くわけですが、正解は見つかりません。というより、ないのかも知れません。しかし、軽々しく結論を出すわけにはいかないにしても、何らかの結論を出していかなければ次に進めません。本当に難しい問題です。
戦争は多大な禍根を残すものなのだと感じます。
読んだ本
ベルンハルト・シュリンク『朗読者』
読んでいる本
テッド・チャン『あなたの人生の物語』
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