自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
バレー部の桐島が突然、部活をやめます。その波紋は少しずつ広がっていきます。野球部ユーレイ部員の菊池宏樹、桐島と同じバレー部の小泉風助、ブラスバンド部部長の沢島亜矢、映画部の前田涼也、ソフトボール部の宮部実果のことがつづられます。そして、高校にある確固とした「階級」のようなものが明らかにされていきます。桐島は最後まで姿を現しません。
青春小説。
文体が印象に残ります。耐えられない人もいるかも知れない、と感じます。その文体に対する評価が、『桐島、部活やめるってよ』に対する評価に直結します。
小説としては秀逸。個々の描写と小道具が適切に機能しています。そして、短編同士は微妙にすれ違っています。桐島の物語に収まっていかない点は、逆に面白いです。完成度は高いのです。誰でも楽しむことができるのではないかと感じます。
著者は、若者の「リアル」に徹底的に寄り添っているようです。そして、そのリアルという言葉は微妙に恥ずかしいものです。しかし、そういう感覚はないのだろう、と思います。誰もが、『桐島、部活やめるってよ』の中にこそ若者の現実があると言いながら絶賛していますが、本当に、現実が綴られているのだろうか、と感じました。本当の現実は読めたものではない、と思うのですが。
小説すばる新人賞受賞作。
読んだ本
朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』
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