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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★

著者:  保坂和志
出版社: 新潮社

  『猫に時間の流れる』は保坂和志の短編集。『猫に時間の流れる』『キャットナップ』収録。

  『猫に時間の流れる』
  ぼくは古ぼけたマンションの3階に住んでいるのですが、両隣の美里さんと西井はそれぞれチイチイとパキという猫を飼っていました。そこにシロクロという猫が乱入してきて毎日マーキングしていくのですが、いつの間にか慣れていき・・・

  『キャットナップ』
  千駄ヶ谷のアパートに引っ越してから2年。真下の階に住む上村さんから声をかけられ。猫をお風呂に入れることになります。彼女はモデルなので、腕に傷をつけるわけにはいかなかったからです。

  どちらも猫小説。

  しかし、決してほのぼのとしているわけではありません。保坂和志の小説はほわっとしているように見えるけど、実はいつでも考え続けています。多分、日常の中に存在する法則性/仕組みのようなものをえぐりだそうとしているのです。

  しかし、脈絡もなく考えているというわけではありません。個々の人間や猫が個々に成り立っているということはなくて、関係や空間の中でそれらは成り立つのだという思想が、大前提としてあるようです。だから、明快です。その辺りに、私がただ周辺の出来事をつらつらと語っているだけなのに、「私についての小説」にはなっていない秘密があるのかも知れない、と感じます。

  主人公は、若者たちの文化にとけこんでいるし、女性とも普通に会話できるし、狭い範囲内でしっかりと生活しています。他人と関係をつくることができる人間なのです。そこが妙に印象的です。破滅的だったり、閉鎖的だったりした、かつての文学者とは随分と違います。

  そして、全てが整備されきった現代社会というものに対して違和感を持ち、寂れた空間や隙間に目を向けるところも印象的。その、進歩への不信ともいうべきもやもやした感覚は、いかにも現代的。


自森人読書 猫に時間の流れる
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