自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
★★★
作者: 山田風太郎
出版社: 集英社
佐野洋・編『最大の殺人』収録の短編。山田風太郎の初期の短編の傑作、だそうです。確かにとても面白い。
同じような奇想と、ちょっとグロテスクな作風から、同じ名字の小説家、山田悠介を一瞬連想するけど、もう全く比較になりません。山田風太郎は、強烈なエログロっぽい雰囲気を発散しながら、それでいてきちりと綺麗な文体だから、薄っぺらい山田悠介じゃ全然太刀打ちできるはずがない。というか、山田悠介はそもそも日本語としての間違いが多くて、そこにまずうんざりです・・・
『黒衣の聖母』は、敗戦を背景にした絶望感・空虚感が滲み出てくるような感じがします。
学徒出陣で出征したものの生き延びて、戦後帰ってきた男、蜂須賀が主人公です。彼には、愛する女性・マチ子がいました。ですが、彼女は戦争中空襲に遭って行方不明になってしまっていました。戦場へ出ていった男が生き延び、本土にあった女が死んだ・・・・・ 皮肉です。
戦後、蜂須賀は闇屋となり、けっこう儲けてそれなりに良い暮らしをするのですが、かつて愛した人のことが忘れられないでいました。そんなある日、かつての恋人とどことなく雰囲気の似た女性と出会います。凄く美人。それでいて実は、パンパン。赤ちゃんを養うために体を売っている、というのです。蜂須賀は出会った彼女のことを「聖女」のように思いながら買い、彼女に溺れていくのですが、実は・・・
「酒飲んで女を買った、その後女を買うときはなんとなく酒が必要になった」というところがミソ。つまり、意識が朦朧とした中、しかも暗闇で女と抱き合っているので女が入れ替わっていても気付かないのです・・ それがこの物語に仕掛けられたトリック。
しかも、最後の手紙まで読むとどきりとします。ため息をつきたくなります。この切れの良さ、そしてなんともしがたい薄気味の悪さがぽんと残されるところが、短編の醍醐味だなぁと感じます。
自森人読書 黒衣の聖母
作者: 山田風太郎
出版社: 集英社
佐野洋・編『最大の殺人』収録の短編。山田風太郎の初期の短編の傑作、だそうです。確かにとても面白い。
同じような奇想と、ちょっとグロテスクな作風から、同じ名字の小説家、山田悠介を一瞬連想するけど、もう全く比較になりません。山田風太郎は、強烈なエログロっぽい雰囲気を発散しながら、それでいてきちりと綺麗な文体だから、薄っぺらい山田悠介じゃ全然太刀打ちできるはずがない。というか、山田悠介はそもそも日本語としての間違いが多くて、そこにまずうんざりです・・・
『黒衣の聖母』は、敗戦を背景にした絶望感・空虚感が滲み出てくるような感じがします。
学徒出陣で出征したものの生き延びて、戦後帰ってきた男、蜂須賀が主人公です。彼には、愛する女性・マチ子がいました。ですが、彼女は戦争中空襲に遭って行方不明になってしまっていました。戦場へ出ていった男が生き延び、本土にあった女が死んだ・・・・・ 皮肉です。
戦後、蜂須賀は闇屋となり、けっこう儲けてそれなりに良い暮らしをするのですが、かつて愛した人のことが忘れられないでいました。そんなある日、かつての恋人とどことなく雰囲気の似た女性と出会います。凄く美人。それでいて実は、パンパン。赤ちゃんを養うために体を売っている、というのです。蜂須賀は出会った彼女のことを「聖女」のように思いながら買い、彼女に溺れていくのですが、実は・・・
「酒飲んで女を買った、その後女を買うときはなんとなく酒が必要になった」というところがミソ。つまり、意識が朦朧とした中、しかも暗闇で女と抱き合っているので女が入れ替わっていても気付かないのです・・ それがこの物語に仕掛けられたトリック。
しかも、最後の手紙まで読むとどきりとします。ため息をつきたくなります。この切れの良さ、そしてなんともしがたい薄気味の悪さがぽんと残されるところが、短編の醍醐味だなぁと感じます。
自森人読書 黒衣の聖母
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