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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  安部公房
出版社: 新潮社

  昆虫採集に出かけた男は砂丘に迷い込み、村落の人間に助けを求めた。だが、彼らは男を助けるどころか、砂の中に埋もれゆく一軒の家に閉じ込めてしまう。男は、その家にもとからいた女とともに砂掻きをしながら、生活していくことになるのだが、どうしても納得できず何度も脱出を試みる。しかし、決してうまくいかない。女は逆に、男を家に縛りつけようとした。村の人々はそれを冷静に観察していて・・・

  1/8mmの砂に包まれた小説。

  砂に埋もれつつある村なんてものは、存在しないはずです。それなのに細部の描写が生々しいだからか、いかにも本当にある出来事のような気がしてきます。安部公房の創りだす気持ち悪い世界というものは凄いです。

  文章は、非常に読みやすいです。普通のサスペンス小説でも読んでいるような気分で読めます。中身を理解できたとはいえないけど・・・

  「罰がなければ逃げる楽しみもない」という扉の言葉に呼応して、世界が逆転してしまう三章が非常に面白いです。それまでの過程があるので、結局男がたどり着いてしまった境地になんとなく納得できてしまいます。「希望」とはいったい何なのか。どこにもそんなものはなくて、本当は自分で勝手に思い描くものなのかも知れない。

  第14回読売文学賞を受賞。1968年、フランスの最優秀外国文学賞を受賞。映画化もされています。


自森人読書 砂の女
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