自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
★★★★★
著者: 井出孫六
出版社: 社会思想社
井出孫六のデビュー作。「秩父困民党」を闇の中から掬い上げた名著。何度も繰り返し、新装版がだされています。多分、秩父事件が映画になったりしてブームになるとそれに乗じて、新たにだされるのだと思います。読みやすくて分かりやすいから手にとられやすいんじゃないかなぁ。
僕は、『王道の犬』という漫画を読んで、秩父事件のことを知りました。それでもう少し詳しいことが知りたいなぁと思っていたら、自由の森学園の図書館に『秩父困民党群像』があったので手に取りました(それにしても、自森の図書館っていうのは古い本の宝庫です、1986年出版の古いのが綿ぼこりの中に置いてあった・・・ もう他の社(新人物往来社・文元社などなど)からたくさんの新装版もだされているのに)
そもそも秩父事件とは何か。まぁ簡単に説明するなら、「明治17年11月、埼玉県秩父郡の農民が日本政府に対して武装蜂起した事件。1週間あまりで鎮圧され、1万4千人が処罰の対象になった。背景には自由民権化運動の激化があったとされる」というふうになります。ですが、それでは何も見えてきません。単なる農民一揆みたいなものなのか? とも思えます。
井出孫六は、秩父事件にした参加した中心人物たち1人ひとりの足取りを丹念に追っていきます。すると、叛乱を指導した「秩父困民党」の田代栄助らは、最初暴力的なやり方ではなく交渉によって状況を打開しようとしていたと分かります。高利貸や役所に借金の軽減を求めて交渉したり、政府に租税の軽減を求めて嘆願し・・・ しかし全く効果がありませんでした。
背景には、「松方デフレ」がありました。西南戦争の戦費が嵩んで国家財政はぼろぼろ。国内はインフレ状態。大蔵卿・松方正義はそれを解決するため、デフレ政策を行いました。そしたら物価が下落。完全な不況に陥ったわけです。そして、しわ寄せをくらった農村はもっとぼろぼろに。埼玉県秩父の農村もそんな状況でした。
「秩父困民党」は、話してもらちがあかないので怒りました。そして、最後の手段として武装蜂起を画策。彼らは、秩父に「独立国」を築くことを目指しました。つまり、革命に近い叛乱です。準備不足ではあったものの民衆のパワーは、警察や憲兵隊を圧倒しました。しかし、最後にはとうとう東京から軍隊出動。民衆を圧殺しました。そうして、叛乱は1週間で終わってしまいました・・・
井出孫六は、人間くさい「秩父困民党」のメンバーたちを中心に、「秩父事件」を描き出してみせます。基本的に彼らに寄り添って。章ごとにいろんな人を取り上げていきます。各章のタイトルを挙げていくと・・・ 「血盟のオルグたち 落合寅市・坂本宗作・高岸善吉」。「風布の人びと」。「神官と信徒たち」。「佐久の同盟者 菊池貫平・井出為吉を中心に」。「学務委員と教師たち新井周三郎を中心に」。「悲劇の組織者・小柏常次郎」。「群馬からの助っ人 新井虎吉・貞吉父子を中心に」。「秩父の谷間の女たち」という感じです。
それほど分厚い本ではないけれど、いろんなことを考えさせられます。とても読み甲斐があります。
自森人読書 秩父困民党群像
著者: 井出孫六
出版社: 社会思想社
井出孫六のデビュー作。「秩父困民党」を闇の中から掬い上げた名著。何度も繰り返し、新装版がだされています。多分、秩父事件が映画になったりしてブームになるとそれに乗じて、新たにだされるのだと思います。読みやすくて分かりやすいから手にとられやすいんじゃないかなぁ。
僕は、『王道の犬』という漫画を読んで、秩父事件のことを知りました。それでもう少し詳しいことが知りたいなぁと思っていたら、自由の森学園の図書館に『秩父困民党群像』があったので手に取りました(それにしても、自森の図書館っていうのは古い本の宝庫です、1986年出版の古いのが綿ぼこりの中に置いてあった・・・ もう他の社(新人物往来社・文元社などなど)からたくさんの新装版もだされているのに)
そもそも秩父事件とは何か。まぁ簡単に説明するなら、「明治17年11月、埼玉県秩父郡の農民が日本政府に対して武装蜂起した事件。1週間あまりで鎮圧され、1万4千人が処罰の対象になった。背景には自由民権化運動の激化があったとされる」というふうになります。ですが、それでは何も見えてきません。単なる農民一揆みたいなものなのか? とも思えます。
井出孫六は、秩父事件にした参加した中心人物たち1人ひとりの足取りを丹念に追っていきます。すると、叛乱を指導した「秩父困民党」の田代栄助らは、最初暴力的なやり方ではなく交渉によって状況を打開しようとしていたと分かります。高利貸や役所に借金の軽減を求めて交渉したり、政府に租税の軽減を求めて嘆願し・・・ しかし全く効果がありませんでした。
背景には、「松方デフレ」がありました。西南戦争の戦費が嵩んで国家財政はぼろぼろ。国内はインフレ状態。大蔵卿・松方正義はそれを解決するため、デフレ政策を行いました。そしたら物価が下落。完全な不況に陥ったわけです。そして、しわ寄せをくらった農村はもっとぼろぼろに。埼玉県秩父の農村もそんな状況でした。
「秩父困民党」は、話してもらちがあかないので怒りました。そして、最後の手段として武装蜂起を画策。彼らは、秩父に「独立国」を築くことを目指しました。つまり、革命に近い叛乱です。準備不足ではあったものの民衆のパワーは、警察や憲兵隊を圧倒しました。しかし、最後にはとうとう東京から軍隊出動。民衆を圧殺しました。そうして、叛乱は1週間で終わってしまいました・・・
井出孫六は、人間くさい「秩父困民党」のメンバーたちを中心に、「秩父事件」を描き出してみせます。基本的に彼らに寄り添って。章ごとにいろんな人を取り上げていきます。各章のタイトルを挙げていくと・・・ 「血盟のオルグたち 落合寅市・坂本宗作・高岸善吉」。「風布の人びと」。「神官と信徒たち」。「佐久の同盟者 菊池貫平・井出為吉を中心に」。「学務委員と教師たち新井周三郎を中心に」。「悲劇の組織者・小柏常次郎」。「群馬からの助っ人 新井虎吉・貞吉父子を中心に」。「秩父の谷間の女たち」という感じです。
それほど分厚い本ではないけれど、いろんなことを考えさせられます。とても読み甲斐があります。
自森人読書 秩父困民党群像
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