自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
物語の舞台は琵琶湖湖畔にある大劇場・世界座。賑々しい「顔見世」の日が訪れます。世界座を訪れていた少女、蕪は芝居茶屋の若衆・月彦から「準備はいいか?」と書かれた紙片を渡されます。その後、蕪は月彦とともに世界座を冒険することになります。一方、カブキ改革派の旗手・坂東京右衛門は、守旧派の代表・水木あやめから顔見世の切狂言を任されますが困難に直面します。その二つの物語の間に、カブキ史の説明がはさまれています。
カブキを巡る小説。
カブキが民衆から愛されているパラレルワールドが描き出されています。『カブキの日』の世界の現代には、江戸の風情・情緒が残されているようです。
世界座という場所は非常に魅力的。世界座は一種の迷宮です。迷い込んだら絶対に助からない、といわれる三階がとくに面白いです。蕪、月彦は三階を自由に駆け抜けていき、成長します。しかし、単純な成長ではありません。純粋な部分を残した成長です。
最後の盛り上がりは凄いです。
それから、客観的なカブキ史の説明もなんというか、もっともらしくて良いです。読んでいると楽しくなってきます。
カブキ、あるいは芸術というものに対する熱い思いが感じられます。カブキ批評も含まれています。何かを取り上げるということは、その何かを論じることなのだと感じました。
第11回三島由紀夫賞受賞作。
読んだ本
小林恭二『カブキの日』
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