自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
T・S・ガープという男の物語。
看護師ジェニー・フィールズは、欲望というものを理解しない女性でした。彼女は、子供は欲しいけど、夫は欲しくないと感じており、純粋に子どもをつくるためだけにセックスしようと考えていました。ある日、戦場で障害を負い、ガープという単語しか発することの出来ない子どものようなガープ三等曹長と出会います。ジェニーは、チャンスだと思い、彼を看護している最中に勝手にセックスしてしまいます。そしてガープを産みます。その後、ジェニーのもとでガープは成長していき、レスリングに精を出し、セックスに対しても関心を持ち始め、そして小説を書くことにも興味を示し・・・
なんとも奇妙な小説。
様々なエピソードが、平易な文体でテンポよく綴られていきます。あっさりとしています。死や暴力といった世間では重大とされていることも、ばかげたことも同じように綴られていきます。非常に面白いのですが、奇妙な気分に陥ります。変なのです。コミックみたい、というか。クシャッとまるめてしまえそう、というか。
どこまでも流れていく物語は分かりやすくて自然に思えます。しかしそれでいて、どことなくぎこちないし、迷路のようです。うまく説明できないのだけど、どこか唐突というか、積み上がっていかずに、ただ線のように伸びていくだけの物語の造り自体にその要因があるのかもしれません。
真面目な場面でも滑稽な事態が発生し、変な気分にさせられます。それなのにいまいち笑えません。なんというか少し哀しくて苦い気分になるからです。著者はカート・ヴォネガットに師事したことがあるそうですが、いかにもヴォネガットっぽい。
一般的な正常・異常といった概念を無効にするものが秘められている気がします。
まるで、ジェニーは聖女のようです。しかし、彼女から産まれたガープはイエスになれず、平凡な人間となっていきます。彼のこれからが楽しみです。下巻も続けて読もうと思います・・・
今日読んだ本
ジョン・アーヴィング『ガープの世界 上』
今読んでいる本
クリストファー・プリースト『限りなき夏』
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