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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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著者:  山田正紀
出版社: 双葉社

  30分間宙に浮かんだあと墜死した男、各所に登場する不可解なトランプ。主人公の女性が信じる平行世界のこと、オペラ『魔笛』の解釈。残された旧仮名遣いの文書の引用、古典ミステリへの言及。さらに、三大奇書への言及。銀仮面で顔半分を隠している謎の人間、甲骨文による見立て殺人。2メートルもの巨人の骨の発掘、戦闘中に消失する列車。日本が満州国に押し付けようとする新たな「神話」。検閲図書館なる謎の存在、暗躍する幾つもの組織。

  まぁそういった目くらましに引き込まれちゃいけないんだろうけど。これでもか、というくらいに繰り出される魅力的な謎と小道具には感心するしかないです。

  SF的/ファンタジー的設定を用いたミステリ小説。

  物語は、現代(平成元年)の東京と、昭和13年の満州国をいったりきたりします。とてもごちゃごちゃになっていて眩暈がしてくるのですか、最後に到達すると、全ての謎が一応きちりと解決されます。大風呂敷を広げた割には、全てがしっかりと消化されきっていて、素晴らしい。

  推理作家・小城魚太郎の著作『赤死病館殺人事件』の中の一文が、何度も引用されて、とても印象的です。「この世の中には異常(アブノーマル)なもの、奇形的(グロテスク)なものに仮託することでしか、その真実を語ることができない、そんなものがあるのではないか。君などは探偵小説を取るに足りぬ絵空事だと非難するが、まあ、確かに子供つぽいところがあるのは認めざるを得ないが、それにしても、この世には探偵小説でしか語れない真実といふものがあるのも、また事実であるんだぜ。 」

  山田正紀は、2段組680ページという分厚さでもって語るわけです。「昭和史」とはすなわち「探偵小説」なのだ、いや「探偵小説」によってこそ見えてくる「昭和史」があるんだ、と。

  著者が最後に提示するのは、「推理小説」による昭和史の総括。そして、「巨大な力に押し潰された弱者の声を掬うというのは凄く難しいことだけど、やっぱり為されなければならない」という意思。受け付けない人もいるようですが、僕は著者の態度はとてもかっこいいと思うし、『ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件』は傑作だと思います。


自森人読書 ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件
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