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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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「あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている」という一文から物語は始まります。男声読者は『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めるのですが、それは乱丁本でした。なので、本屋へいって取り替えてもらおうとすると、それはポーランド人作家タツィオ・バザクバルの『マルボルクの村の外へ』という小説かも知れないということが分かります。彼は、ちょうど同じ本を読んでいた女性読者と出会います。そして、乱丁本かも知れないから連絡を取り合って中身を確認しようと約束します。その後、男声読者は幾度となく読書を中断させられ、女性読者と邂逅することになります。

『冬の夜ひとりの旅人が』『マルボルクの村の外へ』『切り立つ崖から身を乗り出して』『風の目眩も怖れずに』『影の立ちこめた下を覗けば』『絡みあう線の網目に』『もつれあう線の網目に』『月光に輝く散り敷ける落葉の上に』『うつろな穴のまわりに』『いかなる物語がそこに結末を迎えるか?』といった小説の冒頭が連なり、その間に男声読者と女性読者の物語が綴られています。
『冬の夜ひとりの旅人が』

摩訶不思議な小説。説明不可能といっても過言ではありません。

作中作があふれています。チンメリア国、チンブロ人民共和国、ポルトガル、スペイン、さらには日本の架空の小説まで登場。どの小説もそれぞれ面白いのですが、それ以上にとにかく作品全体が面白いです。

遊び心に溢れていて愉快なのに、イタロ・カルヴィーノという人の作品論、読書論のようにもなっています。

『冬の夜ひとりの旅人が』という小説は、小説というもの、あるいはそれによって誘発される読書という行為それ自体を観察し、考察し、経験し、再現し、探索し、筆記し、解体し、構成していきます。読書と言うのは一度きりの体験なのだということを教えてくれるし、様々な読み方があるということを理解させてくれます。

とにかく、読書の楽しみが詰まっています。そして、大袈裟かも知れないけど、小説はあらゆる可能性を秘めていて、あらゆる世界を構築できて、あらゆる物を詰め込むことができるのではないかと感じさせてくれます。


読んだ本
イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』

読んでいる本
恒川光太郎『夜市』
保坂和志『言葉の外へ』
アドルフォ・ビオイ・カサーレス『脱獄計画』
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