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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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『ヘヴン』
僕は斜視です。だから、学校では、「ロンパリ」と呼ばれ、殴られ、蹴られ、笑われ続けています。その苛めを主導しているのは二ノ宮。彼はクラスの頂点に立ち、大人からも一目置かれています。だから、僕はどうしようもありません。そんな僕は、不潔な格好をしているため同じように陰惨な苛めを受けているコジマから手紙を貰い、親しくなります。彼女は離別した父親と繋がっているために、そのような格好をしていました。

小説。

主人公は、暴力について考えていきます。そして、コジマや、二ノ宮の友である百瀬の言葉に翻弄されつつも、必死に何かを選び取ろうとします。しかし、結局、憎らしい二ノ宮を殺したり、石で殴ったりすることはなかなかできません。したくないからです。

非常に深いです。僕のような中学生が、哲学的な言葉を放つはずはないし、浮ついている、というような指摘もありますが、それらの指摘は、はずれているような気がします。『ヘヴン』は、思索のための小説なのだから。

読んでいると痛くなってきます。コジマは、あらゆる人間は加害者か、あるいは被害者にならざるを得ないのだし、そうであるならば最も弱き者になるしか、加害者にならない方法はないというふうに考えていきます。その考え方自体はよく分かるし、共感します。だけど、それは、あらゆる人間に罪を押し付けることにもなります。非常に嫌悪されることは明らかです。あらゆる宗教が、そういう側面を持っているような気もしますが。

一方、百瀬は、全てを「たまたま」、つまり偶然という言葉で説明しようとします。そして、全ては巡りあわせでしかない、というふうに断言します。怖いけれど、強い気がします。

川上未映子は正面から苛めというものに挑みかかります。古風ともいえます。しかし、迫力があるし、言葉の使い方は巧みだし、何よりその挑み方が良いです。苛めは良くない、というような分かりやすくて美しい結論を導き出すのではなく、苛めや暴力を根本的に捉えようとしていくことに感動します。主人公にとって、ラストの光景は、ヘヴンなのだろうか、と考えてしまいました。

本屋大賞候補作。


読んだ本
川上未映子『ヘヴン』

読んでいる最中
スティーヴン・ミルハウザー『イン・ザ・ペニー・アーケード』
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