自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
1925年に刊行された短篇集『In Our Time』の中にさしはさまれている小品(ショートショートと言っても良いほど短い)を幾つか集めたのが、『in our time』。避難していく人間の群れ、闘牛、大臣の射殺などが描かれています。むだなものが完全に削ぎ落とされています。残っているのは、ザクッとした描写だけ。訳が良いです。柴田元幸訳。
ヘミングウェイの短編集。
『老人と海』は、好きではありませんでした。なんというか惹かれなかったのです。ですが、『in our time』は面白かったです。清いからです。ヘミングウェイが分かります。
書きたいことが満ち溢れていても、それらをこぼさずに書き込んでいくことはできません。訳が分からなくなってしまうからです。だから、小説家は、本当に伝えたいと思っていることだけを選び抜き、並べていきます。しかし、ヘミングウェイには書きたいことがないのではないか、と読んでいて感じます。絞っているのではなく、逆に、捻り出しているような印象を受けます。
ただし、描写自体は練り抜かれています。
作者のこだわりが隅々にまでいきわたっています。そして、それによって、徹底的に、縛り付けられています。だから、読みやすいけれど、なんだか妙に息詰まります。それが良いかなぁと感じます。
読んだ本
アーネスト・ヘミングウェイ『in our time』
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