自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
物語の舞台は、京都の外国語大学。乙女たちは、スピーチコンテストのとき『アンネの日記』を暗誦するため、毎日必死に練習しています。しかし、みか子はいつでも同じ部分から先が分からなくなってしまいます。彼女は忘れることを恐れます。一方、麗子様は練習を続け、トップに君臨します。彼女は、バッハマン教授との仲が疑われています。バッハマン教授は人形を抱きながら通勤します。そして、『アンネの日記』をロマンティックに語るべきではない、と強調するのですが、乙女たちの間には噂が飛び交い・・・
コミカルな作品、なのか。
『アンネの日記』を暗誦する乙女たちの物語。文章は非常に短いし、登場人物たちは特徴的です。だから、読みやすいです。「少女漫画的ではないか」と指摘している人がいるみたいだけれど、よく分からないです。「少女漫画的」という表現は、すでに様々な場面において、濫用されているからです。
素直に読めば、歴史の彼方にある「他者」の経験を暗誦することによって「わたし」のものにしていく過程が綴られている、ということになるのかも知れません。
日本語とドイツ語に通じる小説家と言えば、多和田葉子を思い浮かべます。通じる部分がないことはない気もします。僕は多和田葉子のほうがはるかに好きだけど。
芥川賞受賞作。
読んだ本
赤染晶子『乙女の密告』
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