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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  藤沢周
出版社: 集英社

  十八歳の少女アヤは廃業を決意していた彫物師・彫阿弥のところへ赴き、全身に刺青を彫って欲しいと告げます。彼女は、観世音の刺青によって自分にセックスを強要するある男を圧倒したいと願っていたのです。しかし、彫阿弥は拒否します。若い女の体に彫ることは容易ではないし、刺青は糞なのだというふうに彼は考えていたからです。ですがアヤは刺青にさほどの意味はない、と思いつつもそれを欲し・・・

  ぎくしゃくとして、時折状況を把握しづらくする文体が作品の雰囲気と合っています。

  どろどろとしたものが底の方に溜まっているみたいなのに、全体としてはガサガサした冷たい印象を受けます。不思議なことに耽美的ではない気がします。登場人物たちが一途だからか。

  アヤは、刺青を彫ることで自分を追い詰め、生きる力を捻り出そうとします。妙に神々しい感じがします。彫阿弥は刺青にこだわりつつも、それが何であるのか分からずに迷い、醒めています。彼は非常に冷淡です。自分の行為に溺れつつもぎりぎりのところで踏みとどまり、それを凝視しています。

  彫阿弥の冷淡さというか、思いやりというか、勝手さが明確になるのはラスト。南無阿弥陀仏と書いて欲しいとアヤに言われたのに、全てをぶち壊してしまいます。綺麗な物語のままでは終わりません(むしろ終われないのか)。彫阿弥の行動は、非常にエゴイスティック。ある意味では、お茶目ともいえるのかも知れないけど。

  登場する人たちが抱え込んでいる絶望があまりにも深すぎるせいか、読んでいても入り込めないような印象を受けます。どこにも温かみを感じないです。


自森人読書 刺青
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