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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  カート・ヴォネガット
出版社: 早川書房

  主人公は、全米一の大富豪マラカイ・コンスタント。彼は、あらゆる時と場所に波動現象として存在するウィンストン・ナイルズ・ラムファードによって選ばれます。そして、「最大の受難者」として太陽系の様々な星を右往左往することになります。そうして、最終的には土星の衛星タイタンにたどり着くのですが・・・

  奇怪な小説。

  一般的にはSFに分類されているけど、サイエンス・フィクションにしては妙に哲学的。人間が自由意志を持つとはどういうことなのか、全能というのはいったいどういうことか、考えさせられます。とはいえ、決して重厚ではなく軽妙。荒唐無稽、もとくは「ぶっ飛んだ」と言う言葉がぴったりくるような展開には翻弄されるばかりです。

  とはいえ、文体と物語はとても軽いのにそれでいてシニカルで、なんというか虚無的。いかにもいきあたりばったりで、まるでどこにも意味あるものなど存在しないとでも言いたいかのよう。タイトルにすら深い意味はないようなのです。SF小説というもののパロディとして読むことも可能です。とにかく諧謔に満ちています。

  基本的に、ジョークはそれほどどす黒いことはなくてからっとしているけど、やっぱり妙に哀しいです。人間というものは、やりきれない、と感じさせられます。

  けど、完全な闇黒に追い落とされるというわけでもありません。どこまでも醒めきってしまい、全てのものが剥がれ落ちたあとにも愛はある、という、ある意味では安っぽいし、吹けば飛ぶような悟りがもたらされます。それは物凄く軽いけど、それでいて重い答えのような気がします。

  爆笑問題の太田光がことあるごとに絶賛していますが、その感覚はよく分かります。

  それにしても、ヴォネガットの小説には、ぞくっとするほど印象的なセリフが満ちています。「だれにとってもいちばん不幸なことがあるとしたら、それはだれにもなにごとにも利用されないことだ」とか。


自森人読書 タイタンの妖女
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