自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
日向健介と白鷹小夜子は美術大学の学生。二人とも将来の日本画壇を背負って立つと期待されている優れた人たちでした。彼らは卒業制作指導教官であり、画壇の重鎮でもある鏑木聡信教授に誘われ、「前衛工房」なる画廊へ出掛けます。そこではあやしげで危険なコンセプチュアルアート展覧会が行われていました。日向健介は激発し、白鷹小夜子は笑い出すのですが、展示されているものはじょじょに過激になっていき・・・
これはあまりにも面白すぎる、と感じました。
案内の人とともに、教授と学生の3人が「これは芸術である」「これは芸術ではない」と殴り書きしてある紙が置いてあるだけのところや、剃刀の中をかいくぐらないと見れない絵があるところや、動物が磔にされているところを巡っていくだけなのですが、難解なことはなくて物凄く笑えます。立派な論理というか、屁理屈が頻出。
「正しい」芸術観を持つ若者たちがコンセプチュアルアートによって崩壊させられていく物語です。とにかく笑えます。そして、ゾッとします。芸術って何なんだろう、と考えさせられます。
今はもうない過激な芸術展覧会、読売アンデパンダン展を基にしているようです(赤瀬川原平らが出展していたやつ)。どれだけアブナイものだったのだろうか、想像もつきません・・・
「小説」という形式を自覚し、それを指摘するような文章が挟まれているところは、ちょっと筒井康隆っぽいかも。
今日読んだ本
三浦俊彦『これは餡パンではない』
今読んでいる本
グレッグベア『タンジェント』
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