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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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著者:  飯嶋和一
出版社: 小学館

  物語の舞台は江戸時代初期の長崎。徳川家康の子・秀忠が大御所としていまだ力を握る一方で、家光の時代が迫る頃です。主人公は海外との貿易により、西方一の豪商として名を馳せる末松平左衛門(二代目末次平蔵)と、長崎の火消組頭・平尾才介。2人は、長崎の人たちへの思いを胸に、内から外から迫る敵を打ち払っていきます。

  当時は、どんどん幕府の国家統制が強まっていく時代でした。民衆はどんどん締め付けられていきます。各地で、切支丹弾圧の嵐が吹き荒れました。とくにキリシタンの多い長崎など九州では、徹底的な弾圧が行われました。海の男たちもどんどんと締め付けられていきました。貿易はじょじょに幕府に抑えられていきました。末松平左衛門は、それに対抗しようとして自分の力の及ぶ限り、色々な方策を打っていきます。

  そして締め付けの一方で、鬱屈とした思いを抱える大名たちは諸外国への侵略に乗り出そうとします。それは、西洋諸国の強い反発を招くことは確実です。そうなれば、九州一の良港・長崎がまっさきに戦場となります。末松平左衛門はその無謀なる海外侵略も阻止しようとします・・・

  読んでいて、ローズマリー・サトクリフを思い出しました。もちろん全く異なる作風なんだけど。でも、歴史を基にした小説であること、「めでたしめでたし」の結末が待ち構えているわけではないこと、歴史の流れの中では敗者にいる位置の人物を取り上げること、等は共通しているよなぁ、多分(あとは両者とも、とても面白い作品をたくさん書いていることも共通している)。

  飯嶋和一は、文藝春秋の直木賞をもらったら、今まで自分の本を出版してくれた小学館に対して顔向けできないからと直木賞を辞退している人です。候補になったあとに辞退したらそれはそれで話題になるけど、候補になる前から辞退しているという人も珍しい。

  本屋大賞ができたから、それにランクインして最近は注目されるようになりました(あと、2008年には『出星前夜』で第35回大佛次郎賞を受賞したか)。僕も、最近飯嶋和一のことを知って感動しました。世の中には、こんなふうな面白さを持つ小説を書いている人もいるんだなぁ・・・ ちょっと登場人物の思想や思考が、「近代人」っぽすぎる気もするけど、でも、飯嶋和一が書こうとしているのは、国家などの「権力」に対抗する「個人」の踏ん張る姿なのだから仕方ないのかなぁ、という気もします。

  2005年第2回本屋大賞ノミネート作(8位)。


自森人読書 黄金旅風
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