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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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作者:  松本清張
出版社: 講談社

  『小説帝銀事件』は、小説というよりルポ、もしくはノンフィクションに近い作品です。語り手はある記者。彼は、帝銀事件の事実を徹底的に洗った結果、「警察・検察の捜査や裁判の結果、犯人とされた画家・平沢貞通は真犯人ではない、実はGHQ(旧日本軍731部隊の人間)に関係のある者が犯人だったのでは?」と推測するもの。

  さて、その帝銀事件とはどういう事件か、というと。
  1948年1月26日、安田銀行板橋支店の閉店直後、東京都防疫班の白腕章をつけた男がやってくる。男は、「近隣で集団赤痢が発生した。GHQがここを消毒する。その前に予防薬を飲んで欲しい」と言って、青酸化合物を銀行内にいた16人の職員達に飲ませる。12人が殺害され、男は、現金16万円と小切手1万7450円を奪って逃亡。
  ・・という冷酷非道なとんでもない事件です。

  その後、テンペラ画家の平沢貞通が真犯人として逮捕されます。虚言癖のある人で、喋るごとにウソをぺらぺら喋るような人でした。彼は、ほとんど拷問に近い尋問の結果、事件のことを「自白」。死刑を宣告されます。

  しかし、物的証拠はほとんどなく、松本清張ら多くの人たちが死刑にしてはいけないという活動をしました。そのため、平沢貞通は死刑にはなりませんでした。結局、37年間の収監ののち、獄中で死去。結局、多くの謎を残したまま事件は終結します。

  松本清張が多くの証拠を挙げて、旧日本軍関係者(多分、731部隊関係者)が真犯人ではないか、と書いているのには説得力があります。そもそも警察・検察も、最初のうちは軍関係者が犯人だろうと考えていたのに、どうしてそういう方面の捜査はうまくいかなかったのか・・・? 駐留軍から圧力がかかったからではないか?

  戦後、731部隊の人たちは豊富で貴重な経験・データ(本物の人体を使った毒ガス・細菌兵器などの非人道的な実験を中国でやっていた)を持っていたことから米軍に様々な形で協力し、重用されました(中国・満州に取り残された731部隊などに属した軍人たちは、中国人やソ連によって殺されたり、裁かれたりしました。しかし、日本に密かに帰還した者達は無事だったのです。)。

  そういう者の中の1人が犯人ではないか。いとも容易く10人もの人の命を奪って平然としているところなども、人を『マルタ』と呼んで人間扱いしなかった731部隊の軍人を想起させます。旧日本軍関係者が真犯人というのは、決してありえないことではないし、むしろそれこそが真実のような気もします。まぁ今となっては、真相は闇の中なのですが・・・


自森人読書 小説帝銀事件
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秘録・帝銀事件
今年、世田谷美術館で開かれた「松本清張展」では、平沢が獄中で読んでいた「小説・帝銀事件」も展示されました。その一頁一頁に赤鉛筆で平沢自身が記した書き込みがなされ、どれほどの思いで、この書を読んだのか、胸が熱くなる思いでした。
 逮捕から62年目の夏、松本清張氏が前書きを書いた「秘録帝銀事件」(祥伝社文庫・森川哲郎著)が出版されました。御一読いただけましたら幸いです。
平沢武彦 2009/08/24(Mon) 編集
Re:秘録・帝銀事件
 コメントありがとうございます。ぜひ読んでみたいと思います。「小説」と断っていないものも読まないとなぁ、と思っていたところです(『小説帝銀事件』も良いのだけど)。


 【2009/08/25】
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