自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
斉木鮮は、英語教員に「ア・ルース・フィッシュ(だらしのないやつ)」だと非難されます。それは決して褒め言葉ではありませんでした。ですが、looseは「自由な」という意味も併せ持っていました。その言葉に勇気付けられた鮮は、教師を殴って進学校を中退。そして、赤子を抱えた元彼女・幹のもとへと赴き、彼女との生活を始めます。赤子を梢子と名付け、アルバイトに精を出すのですが・・・
成長の物語。
さっくりとしていますが、なかなかに面白いです。主人公は、母親との不和を引きずり続け、苦悩します。ですが、彼は幹、梢子と生活するうちに成長していき、最終的に幹とセックスすることでトラウマから脱出します。悩みは基本的に淡白なもののように感じられるし、ラストは随分と安易な気もします。けど、だからこそ、『ア・ルース・ボーイ』という作品は現代的なのかも知れません。
真摯な主人公は全くうじうじせず、淡々と苦境を乗り越えていきます。少しも大仰ではなく、気負いもなく、それでいてまっすぐ。
私小説なのに、客観的な視点から書かれている気もします。だから、妙にあっさりとした印象を受けるのかも知れません。
新聞配達などのアルバイトについて綴られている部分が面白かったです。
山田詠美の解説が面白いです。ただし、山田詠美の小説はそれほど好きではないし、彼女が褒めている佐伯一麦の小説にも感心はしなかったのですが・・・
第4回三島由紀夫賞受賞作。
読んだ本
佐伯一麦『ア・ルース・ボーイ』
読んでいる最中
神林長平『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』
ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』
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