自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
「大学教授レオポルド・スファックス(=私)は女学生に、伝記を書きたいといわれ、受け入れます」といった私に関する記憶を、私はフロッピーディスクに溜め込んでいきます。私はパリに生まれました。第二次世界大戦時、父はナチスに協力したため私はそれを不快に感じます。戦後、私はアメリカへ渡ります。そして、評論家として活躍し、大学の講師になり、『あれでも/これでも』を発表。作家や作品の背景を探ることに意味はなく、書かれてしまった文章は独り歩きを始めるからその読まれる文章にこそ意味があると唱えて、「作者の死」を宣言し、圧倒的な支持を受けます。次いで『悪循環』を出版し、「ザ・セオリー」とまでいわれますが・・・
ポストモダニズムを扱った小説。
ミステリとして読むことも出来ます。最高に面白いです。ナチスに協力した私が、それを隠蔽するためにつくりだす強固な論理には感心します。
ポストモダニズムというものは、ニヒリズムに結びつくのではないかと感じます。全てを破壊してしまい、あとには何も残らないのではないか。しかも、ポストモダニストも政治的な背景があって(自分の後ろ暗い過去を隠すため)ポストモダニズムを掲げているのだとすると、何がなにやら訳が分からなくなっていきます。
作品自体の構造も面白いです。「レオポルド・スファックスのしるしたもの」だということになっています。つまり、語り手が信用できないわけです。そして、テキストは独り歩きを始める、という論理に沿った愉快な結末が待っています。完全に、ポストモダニズムを皮肉っているわけです。
何重にもトリックが仕掛けられていることに感心します。『作者の死』というタイトルはバルトからの借用。なおかつ、『作者の死』という小説は、「脱構築批評を掲げていたポール・ド・マンがナチス統治時代に、反ユダヤ主義的なことを書いていたと発覚した」という事実を基にしているそうです。
つまり、ポストモダンを問うポストモダン的な小説なわけです。ここまで仕掛けまくることに感動します。
読んだ本
ギルバート・アデア『作者の死』
読んでいる最中
マーガレット・アトウッド『侍女の物語』
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