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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  初野晴
出版社: 角川書店

  暴走族ルートゼロのリーダーだった昴(すばる)は、月が照らす夜にだけ、機械の力を借りて喋りだす脳死の少女・葉月の依頼を受けます。それは「欲している人の下へ彼女の体のパーツを届けて欲しい」いうものでした。昴は、最初断るのですが・・・

  第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作にして、初野晴のデビュー作。ミステリの賞をとった作品だけど、ミステリっぽくないです。

  以前、同じく初野晴の書いた『退出ゲーム』という小説を読んだことがあります。そちらは明快な学園ミステリで、まぁ可もなく不可もなく、という感じでした。しかし、デビュー作の『水の時計』は凄かった。僕は、こちらの方が断然好きだなぁと感じました。

  童話『幸福の王子』をモチーフにしています。でも、ふわふわした夢物語というわけではなくて、物語の舞台は現代の日本です。臓器移植の問題や日本の医療の問題などが大きなテーマとなっています。だから、かなり重たいものも含んでいるわけですが、ぐいぐいひきつけられます。

  人間の残酷な部分や、汚い部分、見つめたくない部分というのが結構描かれています。それらは、ホラー小説のように恐怖を誘うことを目的としているわけではありません。社会の仕組みの中で爪弾きにされてしまった主人公たちの姿をくっきりと浮かび上がらせるためにあえて書かれています。

  そういうふうに社会的な問題や、人間の汚さをきっちり書いてしまうと、たいてい物語までギシギシしてしまうものです。ですが、『水の時計』は透明感に溢れています。全体としては薄暗いのに、絶望に呑み込まれてはいません。必死で生きる人たち(とくに主人公)の必死さと、ほのかな優しさがあるからなのか、不思議なほど「どこかに救いはあるはずだ」と思わせてくれるのです。

  ラストはとくに哀しいです。


自森人読書 水の時計
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