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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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物語の舞台は1984年のロンドン。ですが、1904年の頃と、ほとんど風景は変わっていません。人々は、愚かな大衆に政治を任せることを諦めました。なので、専制君主制が敷かれ、国王は世襲制ではなく、官僚のうちの誰かが指名されるようになっていました。そして、今回、滑稽な諷刺と諧謔を愛する奇天烈な男クウィンが選ばれます。彼は、市長というものをつくり、選出し、彼らに向かって中世の衣装を纏い、どこにでも鉾槍兵を率いていくよう命じます、勿論市長達は反論しますが、国王クウィンは聞き入れません。ですが、ノッティング・ヒル開発計画をすすめていたとき、ノッティング・ヒル市長ウェインが叛旗を翻し、大変なことになります・・・
『新ナポレオン奇譚』

1904年に刊行された寓話のような小説。

原題は「ノッティング・ヒルのナポレオン」だそうです。H・G・ウェルズらSF作家に対抗するため、執筆したもののようです。陽気に、科学と進歩を信じる人たちに対する批判と嘲笑が溢れています。そして、その指摘はさほど外れていません。

愛郷心/愛国心の問題などが扱われています。情熱的なウェインは理想を掲げ、正しいことを追求し、闘っていくのですが、彼が成し遂げたことは、最終的に帝国を形作ることに繋がってしまいます。まるで、資本主義や、社会主義の末路を予言していたかのよう。社会を良くするために人々は理想を掲げていたはずなのに、いつの間にかそれが破壊と他者の支配に繋がっているわけです。

用いられている言葉は、いちいち印象的。民主主義は専制政治へとたどり着き、「専制民主制」となる、とか。「すべての人は同等に聡明である」という前提を唱える人がいるけれど、実のところ「万民は全て同等に愚かである」ということを踏まえなければ民主主義は長続きしない、とか。

チェスタトンの主張というのは、ようするに「古くからあるものこそ、古びることがないのです」という言葉に集約されるのではないか、と感じます。保守的なように思えますが、ある意味では正しいのではないか。中世にかえりたいとは思いませんが。


読んだ本
G・K・チェスタトン『新ナポレオン奇譚』

読んでいる最中
イタロ・カルヴィーノ『レ・コスミコミケ』
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