自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
恩地元は国民航空の職員としてアフリカナイロビに一人滞在しています。彼は狩りや登山などに打ち込みつつ、僻地ナイロビに左遷されるまでの経緯を思い出します。かつて、彼は国航労働組合の委員長職を無理やり押し付けられました。彼は、その仕事を踏み台にして出世する人間にはならず、経営陣の言いなりになっていた労組を民主化。そして、劣悪な職場環境を改善するため、労働者の熱烈な支持を受けつつ経営陣に真正面から挑みかかり、航空会社として初めてのストを打つのですが経営者からはとにかく煙たがられ・・・
事実を基にした小説だそうです。
主人公・恩地は事故が起きることを阻止するため、一途に職場環境を改善しようとしただけなのにそれだけでアカと言われます。そして、衛生環境の悪い僻地に飛ばされ、その上いつになっても日本に帰してももらえません。あまりにも悲惨です。ですが、彼はだからといって卑屈になることはありません。立派です。
経営者の論理ばかりが尊重され、弱者の側に立って権利を要求すれば何年にも渡って僻地に放逐されることになる企業というのはどう考えてもおかしいと感じられます。
しかし、今でもそういう状況はさほど変わっていないかも知れません。今でも日本では、権利を主張することがなぜか自分勝手なことというふうに言われ、思われているようです。不可解です。
おかしな現実をすっぱりと描き出す著者・山崎豊子も立派な人だと感じます。
読んだ本
山崎豊子『沈まぬ太陽〈1〉 アフリカ篇(上)』
読んでいる最中
カズオ・イシグロ『日の名残り』
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