自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
元ボクサーの警官バッキー・ブライチャートは、同じく元ボクサーの警官リー・ブランチャードと、公衆の面前で久しぶりにボクシングの試合を行います。それは警察公債発行を実現するためのキャンペーンだったのですが、バッキーはそれをうまくこなし、出世。その後、バッキーとリーはコンビを組み、活躍していきます。1947年1月15日、ロス市内で腰を切断された女性の死体が発見されます。その内に身元が明らかになります。本名はエリザベス・ショート。女優になることをめざし、都会へでてきたのに誰に対しても妄想的な嘘をつきまくり、しかも体を男に売り続けていた女性でした。マスコミは、彼女を「ブラック・ダリア」と呼び、その事件をセンセーショナルに報じます。バッキーとリーは必死に事件を追うのですが・・・
実際に起こった殺人事件を基にした小説。
アメリカ社会の暗部を切り取った「暗黒のL.A.」四部作の第一作目。文体は軽快だし、ストーリーは物凄いスピードで進んでいきます。読みやすいけど、翻弄されます。
狂気と暴力とセックスと薬と汚濁とジョークが溢れています。まともな人間はほとんど一人も存在しません。とはいえ、誰もが強烈な個性の持ち主なので、記憶には残ります。
とくに、リーという男が印象的。彼は有能な警官なのですが、怒り狂うと手がつけられず、その上薬漬けになりかかっています。ブラック・ダリアを幼い頃喪った妹のように感じていて事件解決に狂奔します。最初の内は憐れな被害者のように思えますが、実は全然そのようなことはなく、汚れ切っています。
ミステリとしても優れています。ラスト近くになるまで真相は分からず、しかも痛烈などんでん返しが待っています。
読んだ本
ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』
読んでいる最中
奥田英朗『オリンピックの身代金』
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