忍者ブログ
自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
[1260] [1259] [1258] [1257] [1256] [1255] [1254] [1253] [1252] [1251] [1250]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

物語の舞台は1984年のロンドン。ですが、1904年の頃と、ほとんど風景は変わっていません。人々は、愚かな大衆に政治を任せることを諦めました。なので、専制君主制が敷かれ、国王は世襲制ではなく、官僚のうちの誰かが指名されるようになっていました。そして、今回、滑稽な諷刺と諧謔を愛する奇天烈な男クウィンが選ばれます。彼は、市長というものをつくり、選出し、彼らに向かって中世の衣装を纏い、どこにでも鉾槍兵を率いていくよう命じます、勿論市長達は反論しますが、国王クウィンは聞き入れません。ですが、ノッティング・ヒル開発計画をすすめていたとき、ノッティング・ヒル市長ウェインが叛旗を翻し、大変なことになります・・・
『新ナポレオン奇譚』

1904年に刊行された寓話のような小説。

原題は「ノッティング・ヒルのナポレオン」だそうです。H・G・ウェルズらSF作家に対抗するため、執筆したもののようです。陽気に、科学と進歩を信じる人たちに対する批判と嘲笑が溢れています。そして、その指摘はさほど外れていません。

愛郷心/愛国心の問題などが扱われています。情熱的なウェインは理想を掲げ、正しいことを追求し、闘っていくのですが、彼が成し遂げたことは、最終的に帝国を形作ることに繋がってしまいます。まるで、資本主義や、社会主義の末路を予言していたかのよう。社会を良くするために人々は理想を掲げていたはずなのに、いつの間にかそれが破壊と他者の支配に繋がっているわけです。

用いられている言葉は、いちいち印象的。民主主義は専制政治へとたどり着き、「専制民主制」となる、とか。「すべての人は同等に聡明である」という前提を唱える人がいるけれど、実のところ「万民は全て同等に愚かである」ということを踏まえなければ民主主義は長続きしない、とか。

チェスタトンの主張というのは、ようするに「古くからあるものこそ、古びることがないのです」という言葉に集約されるのではないか、と感じます。保守的なように思えますが、ある意味では正しいのではないか。中世にかえりたいとは思いませんが。


読んだ本
G・K・チェスタトン『新ナポレオン奇譚』

読んでいる最中
イタロ・カルヴィーノ『レ・コスミコミケ』
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
最新CM
[07/03 かおり]
最新TB
バーコード
アクセス解析
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright © いろいろメモ(旧・自由の森学園図書館の本棚) All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]