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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  海音寺潮五郎
出版社: 文芸春秋

  歴史の中には悪人というレッテルの貼られている人達がたくさんいます。その人たちのことを海音寺潮五郎が丹念に見ていったものです。蘇我入鹿、弓削道鏡、藤原薬子、伴大納言、平将門、藤原純友。藤原兼家、梶原景時、北条政子、北条高時、高師直、足利義満。日野富子、松永久秀、陶晴賢、宇喜多直家、松平忠直、徳川綱吉・・・・・

  読んでみると、けっこう面白かったです。弁護すべき部分のある人も多いんだなぁ。例えば陶晴賢という人。彼は、主君に背いたために、後代まで悪名を残してしまった人物です。しかも、のちに毛利元就に見事なまでに敗れ、死んだため、悪名高い上に、しかも歴史的にやられ役(ザコ)扱いになってる、という悲惨な人です・・

  主君に背いたのは当然のような気がしてきます。主君が武人ではなくなり、貴族のようになっていき、されに自分の地位も危うくなってきてしまう。そうなれば叛乱を起こすのも当たり前かも知れません。けれども、どうしようもなく、とんでもない人というのもいました。同情の余地の無い人、というか。そんな人もやっぱり歴史上にはいるのかな・・

  日本の歴史が好きな人なら、1度は読んでおいたらどうかな、と思います。偉人ばかりではなく、悪人に目を向けるというのは面白いです。それに海音寺潮五郎さんという人の、「歴史を見る視点」がみえて面白いです。僕はそういうふうには読まないかなぁ、とちょっと思った部分もありました。

  事実は1つ(のはず)です。でも、いろんな事情のため、見れない、知れない事実がたくさん生まれてきてしまうので、そこは推測や、想像で埋めていくしかありません。そうすると、その人の知識や考え方によって、全然違う「歴史」のかたちがつくられてしまいます。まぁそれはしかたの無いことだと思います。解釈の違いはある程度は致し方ないし、それが無害な部分についてならば、べつに構わないのではないか、という気がします。神武天皇は実在したんだ、とただ信じているという人がいても、いいのではないか。でも、自分の好きなように「歴史」を操って利用してしまうのはだめだよなぁ、と思います。そして、もしも誰かの生み出した架空が、誰かを冒涜するようなものなら、そこで考える必要があると思います。

  歴史は「財産」なのではないかな、とぼくは思います。たくさんの学びが詰まっています。たくさんの反省に満ちています。それなのに、都合の良いところだけ取り出したり、都合の悪いところを消し去ったりしたなら、また同じように悪い方向へ向かうことを繰り返すことにつながります。だからあえて悪い部分をえぐってみるのもいいかも知れません。


自森人読書 悪人列伝
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