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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  笙野頼子
出版社: 講談社

  『なにもしてない』に続く笙野頼子の短編集。『居場所もなかった』『背中の穴』収録。

  『居場所もなかった』
  私は東京に住む小説家。気に入っていた部屋を追い出され、どこかへ引っ越すことになるのですがオートロック付きの部屋に拘るため、なかなか良い部屋が見つかりません。そして、最終的に引っ越した先では狂いそうなほどの騒音に苦しめられます。再び部屋を探す中で、女性・無職な人間に対する差別というものをひしひしと感じるようになります。彼女は過酷で卑劣な現実との格闘を、現実を露骨にしたような妄想(虚構)を交えつつ、書き綴っていきます。

  『背中の穴』
  奇怪な布を被った人と普通の人に手伝ってもらい、引っ越すのですが、その中で背中の穴があった母や祖母のことを思い出します・・・

  笙野頼子の小説は、全く爽やかではありません。陰鬱です。読んでいると少し辛いし、主人公の暗い感情が伝染してきそうです。しかし、今回は主人公の暴走しまくりの妄想が各所に入り混じるので少し笑えます。「私」の徹底的な拘り(オートロック付きの部屋でないとヤダ)は滑稽です。けれど、分からないでもありません。「私」の妄想は、生きることが困難な社会に対する過剰反応なのではないか、と思います。

  それにしても引越しを書くことで、社会と「私」の病気を明確に抉り出していく笙野頼子の筆致は素晴らしいです。小説というもの自体に対するツッコミすら挟まれています。本当におかしい。藤枝静男の影響が全体的に感じられます。

  文学を蹴落とそうとする人間たちを罵倒しまくるあとがきがまた凄いです。あとがきも1つの作品と化しています。


自森人読書 居場所もなかった
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