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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  絲山秋子
出版社: 新潮社

  気ままに生きている大学生ヒデは、年上の女性・額子が好きでたまらなくて彼女とのセックスに明け暮れていたのですが、そんなある日、下半身丸出しのまま木に縛り付けられ、捨てられてしまいます。ヒデは、それから幾人かの女性と付き合ったりするのですがじょじょに酒に溺れていき、いろんな人から見捨てられてしまい・・・

  妙にうらぶれた雰囲気が漂っているのに、全体的には軽くてスパッとしていて、とても読みやすかったです。爽やかですらあります。あらゆるものを軽く扱うのが今風、なのかなぁ。そのような軽薄さは、少し古いような気もするけど。

  けっこう笑えます。主人公ヒデが落ちぶれていく様は痛々しいけど、吾妻ひでお『失踪日記』を連想させます。ヒデのどこか抜けた部分がおかしいです。とくに、下半身丸出しのまま野ざらしにされて、いろいろ考える部分は悲しすぎるけど、おかしすぎる。

  絲山秋子の小説は、どれも純愛ものとして読むことも可能な気がします(『袋小路の男』とかも)。だけど、純愛がテーマなのだろうか。微妙に違うような気がします。むしろ、純愛とか、愛という言葉でひとくくりにされてしまうような微妙な感情の動きを、きちりと写し取った小説のような気がします。愛とかそういう言葉で、物語を説明/回収してしまうのは、間違っているのではないか。

  絲山秋子は、非常に巧みな人のような気がしました。ダメな男の物語(けっこうありきたりの題材)をここまで面白くしてしまうのはさすが。

自森人読書 ばかもの
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