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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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『アメリカの夜』とは、フランソワ・トリュフォーという監督がつくった映画のタイトルだけど、もともとは映画に用いられる技法のひとつなのだそうです。「一年じゅう空が晴れているカリフォルニアの昼間を、キャメラの絞りと光学フィルターの操作でフィルムにたいする露光を調節して、夜の場面として撮影してしまうハリウッド映画特有の「夜」である」と作中で説明されます。

『アメリカの夜』

映画を扱った小説、なのか。

主人公は映画の人でした。映画を扱っている大学へいきます。しかし、その後Sホールに勤務するようになり、勤務中に『ドン・キホーテ』や『失われた時を求めて』や『神聖喜劇』を読み耽ります。ですが、彼は基本的には「映画の人」であり続けます。

そして、主人公は特別な存在になりたいと願う人たちの中でもがき続けることになります。その辺りの描写は秀逸。

特別な存在になりたい、と願う若者の滑稽な、それでいて哀しい振る舞いが綴られています。

映画に対する、倒錯的な愛が感じられます。それが良いです。映画(あるいは、文学に置き換えても構わない気がする)を熱烈に愛し、それにこだわることが、滑稽にしかなりえない今の時代に適応することができない主人公の姿が、良いです。

主人公と語り手が分裂しているところも愉快です。まどろっこしいし、青臭いけど、今となってはそうすることでしか文学に取り組めないのではないか、と感じます。80年代以降の状態に自覚的といえるのではないか。


読んだ本
阿部和重『アメリカの夜』

読んでいる最中
ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』
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