自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
1927年から3年間に渡って最底辺の社会に身を置き、極貧の生活を経験したジョージ・オーウェルが書いた手記的/ルポタージュ的な小説。20世紀初頭のパリ・ロンドンのことを知ることが出来ます。
著者は労働者たちと同じ目線で辺りを見渡し、放浪者たちと仲良く過ごします。生活環境は劣悪だし(ベッドには南京虫が這い、食べ物もろくにない)、いつでも罵倒と文句が飛び交っているのだけれど、彼らの生活には温かみがあります。死にそうになった時、頼れる誰かが隣にいるのです。個人主義の横行する今とは違うのだなぁと感じます。
ジョージ・オーウェルの社会に対する鋭い視線には感心します。放浪者たちを蔑むのは間違っているし、彼らが無気力に陥っているのは本人たちの資質の問題ではなくて状況がそうさせているのだという冷静な分析には納得させられます。
今の日本にも同じ指摘が当てはまるのではないか、と思います。「フリーターは好きでぶらぶらしているんだ」などと言う人がいますが、それは不正確な認識ではないか。これまで長きに渡って社会と企業は一致団結してフリーターを生み出そうとしてきたわけです(「新時代の『日本的経営』」を読めばよく分かる)。国家や社会がそのような使い捨て可能なパーツとしての人間を生み出す努力をしてきたのに、個人に全責任を転嫁する/押し付けるのは卑劣ではないか。
『パリ・ロンドン放浪記』を読むと貧困問題は大昔からあるのだということがよく分かります。しかも、それは誰かの都合や法の不備のために生み出されているということも理解できます。小説としても面白いのに、深みもある良書です。
今日読んだ本
ジョージ・オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』
今読んでいる本
古井由吉『円陣を組む女たち』
バリントン・J・ベイリー『時間衝突』
足立力也『平和ってなんだろう 「軍隊をすてた国」コスタリカから考える』
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