自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
渋川春海は、幕府碁方初代安井算哲の子です。本名は、安井算哲。本因坊家などとともに、幕閣や諸大名等に碁を指導し、将軍に碁を上覧することを勤めとしていました。ですが、彼はその生活に飽き、算術、暦、天文などに興味を持ちます。そして、あるとき、数学の天才・関孝和の力量に触れ、それに感動し、算術の世界へ踏み出していきます。それから、名君・保科正之などに出会い、暦の改定という大仕事に取り組んでいくのですが・・・
歴史小説。江戸時代初期のことがわかって、非常に面白いです。
物腰が柔らかい主人公・渋川春海は魅力的。そして、彼の傍にいた、えんという女性や、武断の世を文治の世にかえていった名君・保科正之とその周囲の人々も、みな印象に残るし、好感が持てます。なかなか登場しない天才数学者・関孝和の存在感も、なんというか良いです。登場人物が、みな心に残るのです。
渋川春海は、宣明暦の改定に取り組みます。日本では、宣明暦が、800年前から使われていたのだけど、微妙な誤差があったため、渋川春海が生きていた頃には、2日のずれが生まれてしまったのだそうです。
しかし、暦の改定は簡単ではありません。なぜならば、暦の改定は莫大な富をもたらすし、暦自体が権威や権力と結びついているからです。幕府と、朝廷と、藩と、様々な宗教団体がみな納得しなければそれは為しえません。とくに、秘教的な朝廷は神経質です。幕府からみこまれた渋川春海の前には、朝廷が立ち塞がります。しかし、渋川春海は周りの人たちに支えられ、どこまでも突き進んでいきます。
日本語としておかしい部分が散見されます。それが、気にかかりました。
第7回本屋大賞受賞作、第31回吉川英治文学新人賞受賞作。
読んだ本
冲方丁『天地明察』
読んでいる最中
野尻抱介『沈黙のフライバイ』
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